アフリカ以外で最古の人類の足跡

2014.02.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この古代の足跡は、ヨーロッパでは知られる限り最古の人類の直接的証拠だ。

PHOTOGRAPH BY MARTIN BATES, BRITISH MUSEUM
 今から100万年近く前、イングランドのぬかるんだ浜辺を歩いた古代人類は、いつの日か自分たちの足跡を現代人が見つけて興奮することになるとは、夢にも思わなかっただろう。 アフリカ以外で見つかったものとしては史上最古とみられるこの人類の足跡は、適度なかたさの泥、淀んだ、 または流れの遅い水、そして完璧なタイミングで人の目に留まるという条件が奇跡的にそろって発見された。

「2013年5月に我々が足跡を見つけたのは、まったくの偶然だった」と大英博物館の学芸員であるニコラス・ア シュトン(Nicholas Ashton)氏はブログに記している。この足跡は、初期人類が古代世界をどのように移動し たのかを知る手がかりとなるかもしれない。

 アシュトン氏がイングランド南東部の海浜地ヘイズバラを訪れていたとき、同行していたアシュトン氏の同僚 で、イギリスのランピーターにあるウェールズ大学トリニティ・セント・デイビッドの考古学者マーティン・ベ イツ(Martin Bates)氏は、崖のふもとの硬化した堆積物の表面に複数のくぼみがあるのに気づいた。足跡らし いと考えたベイツ氏らは、調査を開始した。

「ヘイズバラの堆積物が80万年以上前のものであることは知っていた」とアシュトン氏は述べる。したがって、 くぼみが本当に足跡なら、人類発祥の地アフリカの外で見つかったものとしては、これまでで最も古い足跡とな る(アフリカでは、タンザニアのラエトリで約360万年前の足跡が見つかっている)。

◆時間との競争

 激しい雨、満ちてくる潮、乏しい光量が現場での足跡調査を妨げた。この地域では、崖の浸食と絶え間ない潮 の干満が、しばしば考古学的資料を露出させ、そして破壊する。そのため、発見した足跡もいつまでそこに残っ ているかわからなかった。

 それでもアシュトン氏らは、2週間をかけて足跡の写真を撮影した。足跡は5月末には影も形もなくなってしま った。

 研究チームはその後、コンピュータープログラムを使って写真をつなぎ合わせ、発見場所の3次元画像を作成 した。そこから足跡の長さと幅を測定し、さらには足跡の主の身長、体重を推定することができた。足跡を残し た集団の推定身長は、最高で1.7mだった。

 足跡のうち12個ははっきりしており、5人分だと特定できた。おそらく年長者と若者が入り混じった集団とみ られる。中には、つま先がはっきりとわかる足跡もあった。

 また、足跡のほとんどは、古代の河口に沿って、南の方角へ向かっていたとみられることもわかった。

 足跡から割り出された推定身長は、足跡を残したのがホモ・アンテセッサー(Homo antecessor)と呼ばれる 初期人類である可能性を示唆している。

“先駆者のヒト”という名をもつこの種は、ヨーロッパに分布し、直立二足歩行を行っていたとアシュトン氏は 述べる。「現生人類に比べて脳は小さかった」。

 アシュトン氏によると、「これらの足跡を残した人類について、それ以上のことはまだほとんどわかっていな い」という。

 今回の研究成果は、米オンライン科学誌「PLOS ONE」誌に2月7日付で発表された。

PHOTOGRAPH BY MARTIN BATES, BRITISH MUSEUM

文=Jane J. Lee

  • このエントリーをはてなブックマークに追加