自閉症、発症の鍵は分娩時?

2014.02.07
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障害児を対象としたドイツの乗馬学校で、ウマに触れる自閉症の少女。

Photograph by Ulla Kimmig, Cosmos/Redux
 自閉症は、痛ましいだけでなく、謎に満ちた病気だ。この病気のうちある種のものに、遺伝的要素が関わっているのは明らかだ。だがその一方で、関わる遺伝子の数や、自閉症スペクトラム障害(ASD)に分類されるさまざまな程度の認知および社会性障害に環境が果たす役割については、いまだにはっきりしない。「Science」誌の2月7日号に掲載された新たな研究により、このさまざまな要因が絡む発症のメカニズムに、さらに新たな要素が加わる可能性が出てきた。この論文では、分娩時に胎児に影響を与えるホルモンと化学物質の相互作用も、1つの要因になりうると指摘している。

 フランス、マルセイユにある地中海神経科学研究所のイェヘスケル・ベン・アリー(Yehezkel Ben-Ari)氏が主導したこの研究では、自閉症行動を見せる子どもを産むようにモデル化した妊娠したマウスの系統に、塩化物の体内レベルを下げる薬剤を投与した。すると、自閉症の兆候を見せるはずの生まれた子マウスには、その症状が全く見られなかったという。

 これより前、2006年にマウスについて行われた研究では、分娩時に子宮を収縮させるホルモンのオキシトシンが、GABA(γ-アミノ酪酸)と呼ばれる神経伝達物質の機能に影響を与える、重要な“スイッチ”の役割を果たすことが判明している。通常、GABAは胎児の成長過程にある脳内で、ニューロン(神経細胞)を活性化させる。しかし分娩時には、オキシトシンの作用により、GABAは逆にニューロンを沈静化させ、傷つきやすい胎児の脳を守る役割を果たす。このスイッチがうまく働かないと、ニューロンは分娩時も活性化されたままで、重要なシグナル伝達分子である塩化物が通常よりも高いレベルにまで上昇する。このような過程を経て生まれたマウスには、自閉症の症状が見られるという。

 2月7日付で発表された研究では、2006年の研究を行ったのと同じチームが、自閉症のマウスを産むようにモデル化された妊娠したマウス2種類に対し、塩化物のレベルを下げるブメタニドという薬剤を投与する実験を行った。この場合、生まれた子マウスの脳の機能は正常だったという。逆に、正常な妊娠したマウスについてオキシトシンの作用を阻害したところ、こちらでは生まれた子マウスは自閉症のような行動を見せた。

 マウスを使った実験でこのような結果が出たことは、2012年に人間の子どもを対象に実施された臨床試験に加えて、さらなる明るい材料と言える。この臨床試験では、3歳から11歳までの子ども60名にブメタニドを投与した。その結果、投与された子どもでは自閉症症状の重症度が下がったという。

 しかし、今回のマウスを用いた実験の結果は、出生前の人間の胎児について、自閉症の発症を予防する方法を示したものではない。胎児がその後、出生を経て幼児となった際に自閉症を発症するかどうかを判断する方法がないためだ。しかし、動物や人間を対象としたさらなる研究を進める上で、新たな情報を提供するものではある。

 研究を主導したベン・アリー氏は、こう述べている。「この研究の結果が正しいと確定されたなら、できるだけ早い時点での(自閉症の)診断が必要だということになる。治療開始時期が早ければ早いほど、成功の確率も上がることはわかっている」

 マサチューセッツ総合病院ルーリー自閉症センターに所属する小児科医のアンドリュー・ジマーマン(Andrew Zimmerman)氏によると、子宮内にいる段階で胎児が自閉症であることを把握できるようなバイオマーカー(生体指標)については、これを突き止める研究が盛んに行われているという。これらの研究では、脳波、血液あるいは尿の検査、羊水内の手がかりとなる物質などが調査対象となっている。

Photograph by Ulla Kimmig, Cosmos/Redux

文=Susan Brink

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