クモはどうやって天井を歩くのか?

2014.02.05
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巣に張り付くメスのバナナ・スパイダー(学名Cupiennius salei)。

Photograph by Michael Hare/Alamy
 クモはどこでも這うことができる。ガラス、壁、天井などあらゆる所にアクセス可能だ。最近になって、科学者たちはクモ類の付着性に関する長年の謎を解き明かした。その秘密は、足先に生える微小な毛にあった。 研究チームは、数千もの小さな毛がクモと表面の間に無数の接触点をつくることによって、クモのへばりつく能力が向上することを発見した。

 その足先の毛は微小で柔軟性がある。分子レベルで見ると、どんなにスムーズな表面にもでこぼこがある。したがって、もしクモの毛が堅ければ表面のある一部分にしか接触しない。しかし、その毛には柔軟性があるためより広い面に接することができ、さらなる付着性が生まれると、ドイツ、キール大学の生物学者ジョナス・ウォルフ(Jonas Wolff)氏は述べる。

 岩や船の船体に永久的に固着するフジツボなどの蔓脚類(まんきゃくるい)とは異なり、クモは一時的に表面に付着できる。それはダイナミック・アッタチメント(動的付着)と呼ばれ、このシステムはフジツボの強力接着剤と比べると付箋紙のようなものだ。

「永久的固着システムは接着剤のようなもので、より強力だが再利用できないことが多い。一方、一時的付着システムは、毛状のマジックテープのように何度も使用可能で、クモの体を支えるのに十分な強度で付着し、且つ接触面は非常に素早く容易に離すことができる」と、クモの付着性を長年研究しているウォルフ氏は説明する。

◆クモの力

 ウォルフ氏は、バナナ・スパイダー(学名Cupiennius salei)がどのようにして落下しない十分な付着力を生み出しつつ、獲物を捕食するために素早く離れられるかを突き止めたかった。

 クモの攻撃は通常4分の1秒もかからず、そして毎秒0.5メートルの速さで引き揚げる。このような俊敏な動きの中で、クモは接触面から付いたり離れたりしている。

 当初、生物学者たちはクモが毛状の足の付着盤によってこれを成し遂げていると考えたが、ウォルフ氏は何かほかの要因も働いていると疑った。キール大学の研究チームは、窓ガラスに張り付くクモによって生み出される力の大きさを測定し、それが97ミリニュートン、重さなら10グラムに相当することを突き止めた。

「これはそれほど大きな力には見えかもしれないが、実はクモの体重の3~4倍に相当する。つまり、滑らかな窓ガラスの表面に逆さで張り付くクモの体に、体重の2倍ほどの物を吊るしても落ちないだろう。より小さいクモの場合、体積に対してより大きな足の付着盤面積となるため、この関係はさらに高くなる」と、ウォルフ氏は指摘した。

◆足の働き

 どのようにして個々の足がそのような力を生み出すかを特定するために、研究チームは毛状の付着盤を包み込む温かい蜜蝋を使って、クモの付着性を不能にした。

 足を1本、ペア、または数本まとめて不能にする実験を行った結果、反対に位置する足(例えば一番前の左足と一番後ろの右足)によって力が生み出されることがわかった。

 足が押し広げられると、毛と接触面の間にさらに多くの摩擦が生じ、より安定的に付着することが可能となる。逆に、足を引き寄せると付着性が少なくなり素早く離れられると、ウォルフ氏らは結論付けた。

 もしあなたが壁をよじ登る夢を抱いているとしても、現実のスパイダーマンがすぐに現れる可能性は低いだろうと、ウォルフ氏は付け加えた。たとえ毛むくじゃらのスーツを身に着けても、人間は単に重すぎる。

 今回の研究は、「Journal of Experimental Biology」誌に1月15日付で発表された。

Photograph by Michael Hare/Alamy

文=Carrie Arnold

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