渡りをするオオカバマダラが激減

2014.01.30
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羽を休めるオオカバマダラ。サウスカロライナ州で。

PHOTOGRAPH BY KATHY BACCARI, NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT
“渡り”をするオオカバマダラが、「重大な危機」に瀕しているとの最新報告が発表された。メキシコにあるこのチョウのコロニーの面積が、1993年に調査を開始して以来最小を記録したという。 この報告は、メキシコのオオカバマダラ生物圏保護区で2013年12月に実施された調査に基づくもの。同保護区内の森林で越冬するオオカバマダラのコロニーが占める面積は、2013年12月にはわずか0.67ヘクタールと、2012年の1.12ヘクタールから44%減少した。この調査は、世界自然保護基金(WWF)とテルセル(Telcel)社の連合体、およびメキシコの国家自然保護区委員会(CONANP)によって実施された。

 オオカバマダラは世界の多くの地域で見られるが、中でも渡りをするオオカバマダラは最も危機に瀕しているため、さかんに研究が行われている。

 WWFメキシコ支部の支部長オマール・ビダル(Omar Vidal)氏は、電子メールでの取材に対して次のように述べている。「オオカバマダラの種全体が危機に瀕しているわけではない。危機に瀕しているのは、カナダとメキシコを行き来するオオカバマダラの渡りの現象だ」。

 渡りをするオオカバマダラの数が急減しているのには、いくつかの理由がある。幼虫の食草であるトウワタが広範囲で減少していること、低温や豪雨など、北米の気候が極端に不安定なこと、そして森林破壊だ。

 オオカバマダラは、トウモロコシなど人間の食用を含む植物の受粉を助けるため、個体数の減少は多くの生態系に悪影響を及ぼすおそれがある。

 また、現在の減少傾向は3年続いている点が特に懸念される。「過去の調査データでは通常は増減を繰り返している」と、ミネソタ州ミネアポリスにあるミネソタ大学でオオカバマダラを研究するカレン・オーバーハウザー(Karen Oberhauser)氏は、電子メールでの取材に対して述べている。個体数の減少は、実際には調査結果より進んでいる可能性さえあるという。

◆オオカバマダラの渡り

 体重約0.27〜0.75グラムのオオカバマダラが注目に値するのは、渡りをする点だ。毎年秋になると、カナダ南部とアメリカから何百万という個体が南と西を目指して飛び立つ。途中で産卵し、餌を食べながら、数千キロの距離を5世代をかけて移動する。

 オオカバマダラの成虫の寿命は普通約1カ月だが、5世代目だけは7〜8カ月ほど生きる。そして1世代でカナダやアメリカからメキシコ中部まで移動すると、WWFは述べている。

 オオカバマダラは最終的にメキシコのミチョアカン州やメヒコ州の森に落ち着いて冬を越し、春になると再び北上する。

◆消える食草

 メキシコへの渡りを引き継ぐために、オオカバマダラはトウワタという植物に卵を産みつける。そのため、卵からかえった幼虫が最初に口にするのはトウワタの葉だ。

 ところが、トウワタは農家にとって好ましい植物ではない。かつてはアメリカ全土で見られたが、特にトウモロコシ畑やダイズ畑に用いられる除草剤の影響で、トウワタの分布は以前に比べて58%減少している。

 もう1つ、オオカバマダラの生息を脅かしているのは、極端な気候変動だ。北米は近年、干ばつや熱波、暴風雨に見舞われている。例えば、2005年と2006年にはオオカバマダラの個体数がきわめて少なかったが、これはおそらくアメリカでの深刻な干ばつの影響とみられる。

 容易なことではないが、北米の3カ国がそろって取り組むことで、オオカバマダラの減少を食い止める方法はあるとオーバーハウザー氏は述べる。

 例えば、大規模植栽を行って、道端などの耕作限界地を含め、植えられる場所にはどこにでもトウワタを植えるのも1つの方法だ。

 北米の園芸家たちも、自分の土地にトウワタを植え、よりオオカバマダラにやさしい環境にすることで貢献できる。

「オオカバマダラが直面している生存の危機を考えると、可能な限り多くの人を動員することがきわめて重要だ」とオーバーハウザー氏は述べる。「我々が力を合わせて取り組めば、オオカバマダラの個体数が回復し、彼らの渡りをこの先何世代にもわたって見られるようになるかもしれない」。

PHOTOGRAPH BY KATHY BACCARI, NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT

文=Christine Dell'Amore

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