アマゾンカワイルカの新種発見か

2014.01.27
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カワイルカの新種と見られるアラグアイアンボト(Araguaian boto、学名:Inia araguaiaensis)。

Photograph by Nicole Dutra
 ブラジルで新種と見られるカワイルカが発見された。研究チームによれば、このイルカは絶滅の危機に瀕しているという。 アマゾンカワイルカ(別名ボト)は、世界的に見て最も絶滅が危惧されている希少なイルカの一種である。現在確認されている4種のうち3種が国際自然保護連合(IUCN)により“絶滅危惧種”に指定されており、100年以上ぶりに新種が発見されたというニュースは、生物学者や保護当局にとっては朗報ということになる。

 ブラジル北部のマナウスにあるアマゾナス連邦大学(Universidade Federal do Amazonas)のトーマス・フルベック(Tomas Hrbek)氏の率いる研究チームは、1月22日、「PLOS ONE」誌オンライン版に新種と見られるアマゾンカワイルカについての論文を発表した。ブラジル中央部のアラグアイア川流域で発見されたこれらのカワイルカは、いくつもの急流と小さな運河によって、西側のアマゾン川流域に生息するほかのアマゾンカワイルカ(学名:Inia geoffrensis、Inia boliviensis)と隔離された状態にあった。このことから、研究チームはこのカワイルカをアラグアイアンボト(Araguaian boto、学名:Inia araguaiaensis)と呼ぶことを提案している。

「研究チームはデータに基づき確固たる主張を行っている」とニューヨークにある野生生物保護協会(WCS)の海洋大型生物プログラム(Ocean Giants Program)の主任科学者であるハワード・ローゼンバウム(Howard Rosenbaum)氏は話す。「今回の発見は非常に画期的なものだ。これを機に、アマゾンカワイルカ種の分類が明確になりつつある」。

◆DNA検査

 アラグアイア川で発見されたイルカのDNAは他のボトのものと明らかに異なっており、このカワイルカを新種に指定するだけの根拠が示された、と研究チームは結論づけている。DNAの違いの度合いから判断すると、アラグアイアンボトは200万年以上前に他の種から分化した可能性が高い。研究論文には、「アラグアイア川に生息するカワイルカと他の種との間には身体的および遺伝的な相違が見られ、このことはアラグアイア川のカワイルカが生物学的に見て別の種であることの有力な証拠となる」と書かれている。

◆他の種にない特徴を発見?

 ローゼンバウム氏によれば、アラグアイア川のカワイルカのサンプルについて母性遺伝のミトコンドリアDNAなどの遺伝子分析を行った結果、他の種に見られないいくつかの“診断的特徴”が見つかった。「いずれの特徴も、アラグアイアンボトが他のボト種から長期間隔離されていたことを示すものだ」と同氏は言う。

「頭部のサイズに顕著な違いがあるほか、歯の数も他の種と異なる可能性があると聞いている」。

◆アラグアイアンボトに迫る絶滅の危機

 研究チームは約120匹のアラグアイアンボトを12週間にわたって観察した。アラグアイアンボトの生息数はアラグアイア川流域全体でわずか600匹ほどだと推測される。

 研究チームは、すべてのカワイルカ種がさまざまな脅威に直面していると警鐘を鳴らす。ダム建設もその1つだ。建設工事によってカワイルカが他の個体群から隔離されれば、繁殖の機会が制限されることになる。地元の漁師により殺されるケースもある。漁師たちはカワイルカに獲物である魚を奪われることを危惧し、漁具を使ってイルカを捕え、始末してしまうのだ。

 研究論文には、「1960年代より、アラグアイア川流域では農業や放牧、水力発電ダムの建設などにより人為的な圧力が加えられてきた。これらすべてが、アラグアイア川の生態系に生物的にも非生物的にもさまざまな悪影響を与えてきた」とある。

 研究チームは、アラグアイアンボトはIUCNレッドリストの“絶滅危惧II類(危急)”に分類されてしかるべきだとしている。さらに論文にはこうも書かれている。「今回の発見は、新熱帯区の生物多様性に関する我々の知識が大きく不足しているという事実、さらには絶滅が危ぶまれる状況下での生物多様性の人為的活動に対する脆弱性を浮き彫りにするものだ」。

Photograph by Nicole Dutra

文=Brian Clark Howard

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