カエルを波紋で探知するコウモリ

2014.01.24
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トゥンガラガエルを捉えたカエルクイコウモリ。

Photograph courtesy Christian Ziegler
 オスのトゥンガラガエル(学名:Physalemus pustulosus)はロマンティックな性質を持つ。 中南米の熱帯雨林に生息するこの小さな両生類は、出会いを求めてうろうろと歩き回ったりはしない。水たまりの中に座って求愛の歌を歌い、水辺の歌い手のすみかに集まってくるメスの注意を引く。

 トゥンガラガエルの声には、予期せぬ効果がある。鳴くときに水面にできる波紋が、上空でひっそりと待っている捕食者に感知されてしまうのだ。

 研究者たちは、カエルクイコウモリ(学名:Trachops cirrhosus)がトゥンガラガエルの求愛の歌を傍受することを既に突き止めている。カエルの側もそれを知っており、近くに捕食者がいることに気付くと黙り込む。

 しかし最近の研究によると、カエルクイコウモリは自らの出した超音波の反響をとらえる反響定位(エコーロケーション)という、いわば生まれ持ったソナーを利用して、カエルが作る波紋までも探知しているという。たとえカエルが発声をやめても、波紋はその後数秒間残るため、コウモリは探知が可能なのだ。

 この能力を調べるため、研究者らは野生のトゥンガラガエルとカエルクイコウモリをパナマの森林で捕獲し、研究室で実験を行った。

 実験の結果、カエルクイコウモリは水面の波紋を感知した場合、トゥンガラガエルを攻撃する頻度が高くなることが分かった。この現象は暗闇でも観察されたことから、研究チームは、カエルクイコウモリは獲物に狙いを定めるのに反響定位を利用しており、視覚的な手掛かりには頼っていないと結論付けた。

◆波及効果

 こうした波紋は、トゥンガラガエルにとって必ずしも災いの種となるわけではないかもしれない。役に立つこともあるからだ。例えば歌うときにできる波紋の大きさで、ライバルとなるオスのカエルたちは互いの競争力を推し量り、もっと大きな声で鳴くか、戦いを選ぶかといった次の行動を判断することができる。

 オランダ、ライデン大学の博士課程修了後の研究者バウター・ハーシュウェルク(Wouter Halfwerk)氏はコメントの中で、「読唇術を使っているようなもの」だと述べている。

「トゥンガラガエルのコミュニケーションにおいては音が最も明らかな要素である一方、発声時にできる波紋も、競合するオスが感知すると行動に影響を受ける」。

 またカエルの側も、捕食者であるコウモリの上を行く方法を既に見つけている可能性がある。すみかを雑然と散らかしておくのだ。

 研究チームは、カエルのいる水たまりにごみや落ち葉などの植物が散らばっていると、カエルクイコウモリは探知が非常に難しくなることを突き止めた。

 これは、ごみが「反響かく乱器」の役割を果たし、水面に何もなければトゥンガラガエルの声によってできるはずの波紋を壊してしまうためだ。

 これにより、捕食するコウモリの反響定位能力が妨害され、カエルは見つからないよう、ある程度身を守ることができる。

 とはいえ、カエルのカーミットの言葉を借りるなら「緑色でいるのも楽じゃない(It’s not easy being green)」といったところだろうか。

 今回の研究結果は、1月24日発行の「Science」誌に発表された。

Photograph courtesy Christian Ziegler

文=Stefan Sirucek

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