ナマケモノ、危険なトイレ旅の見返りは

2014.01.24
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枝にぶら下がるミツユビナマケモノ。ボリビアのマディディ国立公園にて。

PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC
 ミツユビナマケモノは名前に違わぬなまけ者で、彼らの住処である樹冠部から降りてくるのは3週間に一度のトイレの時だけだ。 なぜこんなにトイレの回数が少ないのかというと、実は排泄がナマケモノにとって命懸けの行為だということがその理由の一つである。大人のミツユビナマケモノでは、報告されている死因の半数は、地上近くで捕食者に襲われたことによる。樹冠部の家から降りてくるには、転落事故の危険が伴うのだ。

 しかし最新の研究で、このトイレタイムには明白な理由以外にも、重要な意味があることが明らかになった。

 藻および蛾(ガ)との共生関係によって、ミツユビナマケモノはのんびりとした生活を続けることができる。そしてそれは、この動きの遅い動物の毎月の預金にかかっている。

◆低栄養、低エネルギー

 中南米に生息するナマケモノはミツユビナマケモノも含め、一日のほとんどをジャングルの樹冠部で、木の葉をむしゃむしゃ食べながら穏やかに過ごしている。移動することはめったになく、そのため彼らの被毛にはカビや藻が生える。

 しかし騙されてはいけない。彼らがなまけているのは理にかなった行為なのだ。

 木の葉はカロリーや栄養価が低いので、ナマケモノは比較的少ない栄養価の食事で生きていけるように、エネルギーを保存しておく必要がある。彼らはなまけているというより燃費を良くしていると言える。

 ウィスコンシン大学マディソン校の生物学者ジョナサン・パウリ(Jonathan Pauli)氏は、ナマケモノの研究をする中で、ある疑問に悩まされ始めた。ナマケモノが3週間に一度トイレの旅に出かける時には、危険が伴うだけではなく、登るためのエネルギーコストもかかる。

 ナマケモノがトイレの旅で毎回消費するエネルギーは、一日に使う量の8パーセントを占め、これは人間で言えば30分間早歩きをするのに相当する。なぜナマケモノはたかが排泄にこんなにエネルギーを使うのか、パウリ氏は疑問に思った。

◆食事、排泄、木の葉

 パウリ氏は、まず糞そのものの調査から始めた。すると、メイガ科クリプトセス属(Cryptoses)のガが、まだホカホカの糞の山に卵を産み付け、生まれた幼虫は糞を食べて成長することが分かった。

 幼虫は羽化してガになると、樹冠を好むナマケモノの被毛に入り込み、その中で交尾をする。この関係は当初、ナマケモノにとっては利益も害もない一方的な片利共生かと思われた。

 しかし樹を登るのにはかなりのエネルギーを必要とするので、パウリ氏と共同研究者らは、ナマケモノは林床に排便する際、何らかの隠された栄養面での利益を得ているのではないか、それはメイガとの関係を通じたものではないかと考えた。

 パウリ氏と共同研究者らはこのアイディアを検証するため、ノドチャミツユビナマケモノ(学名:Bradypus variegatus)の被毛に付くガの数と、ホフマンナマケモノ(学名:Choloepus hoffmanni)というフタユビナマケモノの一種に付くガの数を比較し、さらに、それぞれのナマケモノの被毛上にある窒素とリンの濃度、藻の量も比較した。

 その結果、体表に付くガの数、藻の量、栄養素のいずれも、ミツユビナマケモノの方がフタユビナマケモノよりも多かった。

 ガは何らかの形でミツユビナマケモノの被毛に窒素分を与え、それが藻の成長につながっているのだ。

 まだこの仕組みについて正確には分かっていないが、ガの糞がナマケモノの被毛に窒素分を撒いているか、ガがナマケモノ自身の糞を運び戻しているのではないかと考えられる。ナマケモノは快適なトイレを探しに行くというよりはむしろ、ガと一緒に過ごす充実した時間を得るために地上へ出る。そしてガは、ナマケモノのもう一つの食料源となる藻の成長を助ける。

 藻はとても栄養価が高く、脂質に富んでいる。ミツユビナマケモノは自分の毛づくろいをする時、同時に藻を摂取する。こうして、わざわざ林床まで行ってメイガの卵に場所と餌を提供した苦労は、実際にナマケモノ自身の利益となる。ガが窒素分と藻をもたらし、ナマケモノの食料を増やしてくれるというわけだ。

 フタユビナマケモノの場合は、木の葉だけではなく色々な木の実も食べる。樹から降りてくる頻度はミツユビナマケモノよりも高く、どこでもためらいなく糞をする。彼らは普通の食事で栄養が足りているのだろう。

 ミツユビナマケモノにとって排泄は危険な行為かもしれないが、その利益はコストを上回るようだ。

 今回の研究結果は「Proceedings of the Royal Society B」誌で1月21日にオンライン公開された。

PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Carrie Arnold

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