TPPに4つの危惧、環境団体が表明

2014.01.20
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マレーシア、ボルネオ島の合板工場で働く男性たち。絶滅が危惧される多くの樹木が世界中で伐採されている。

Photograph by Mattias Klum, National Geographic
 アメリカ、カナダ、メキシコ、そして環太平洋地域の国々による大規模な自由貿易協定、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の草案がリークされた。この内容に対し、環境保護の観点から複数の大手自然保護団体が疑問を投げかけている。 シエラクラブの執行役員マイケル・ブルーン(Michael Brune)氏は、15日に協定の草案が告発サイト「ウィキリークス」に掲載されたのを受けて声明を出し、「環境条項がこの流出文書の通りに確定するなら、環境の点から見たオバマ大統領の通商実績はジョージ・W・ブッシュ以上にひどいものとなるだろう」と批判した。

「この草案は、海洋、水産物、野生動物、森林保護といった我々が重視する問題のどれに対しても効果がない。それどころか、過去の自由貿易協定が成し遂げてきた進歩を後戻りさせるものだ」とブルーン氏。

 協定の参加国は、オーストラリア、ブルネイ、チリ、日本、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、カナダ、メキシコ、アメリカの12カ国に拡大している。

 こうした批判に、米国政府も反論に出ている。米国通商代表部(USTR)は15日、文書流出を受けてブログ記事を掲載し、「環境スチュワードシップ(自然環境の責任ある管理)は米国が重視する基本的価値観であり、断固とした完全な強制力のある環境条項がTPPに加えられるよう主張していく。これが実現しない限り合意することはない」とコメントした。

 リークされた条項に関し、環境団体が危惧するのは以下の4つの点だ。

◆ 1. 協定には基本的な環境規定がない

 これが、検討中の協定が抱える欠陥の全てと言える。

 環境保護活動家たちによれば、オバマ政権の主要な環境政策関係者数名が最近の発言の中で、強制力を持つ環境規定を欠いた協定を同政権は支持しないと示唆しているという。

 しかし、リークされた草案の「全体に及ぶ」問題は「強制力がない」ことだと、アメリカの天然資源保護協会(NRDC)国際気候政策責任者のジェイク・シュミット(Jake Schmidt)氏は言う。

 流出文書は、協定参加国は環境保護の対策を講じるべきだと言及しているものの、シュミット氏は「多くのただし書きが付けられており、実質的に参加国は規定の強制力を失わせることが可能」だと警戒している。

◆ 2. 自然保護団体は、協定草案は水産物の乱獲に歯止めを掛けていないと指摘

 TPPを検討中の国々は、水産物が乱獲されないよう十分な保護を行う「責任」があるが、協定の草案ではそれが欠けている―と指摘するのは、世界自然保護基金(WWF)の理事長兼最高経営責任者(CEO)を務めるカーター・ロバーツ(Carter Roberts)氏だ。

 ロバーツ氏によれば、TPP参加国の漁業生産高は世界の約3分の1を占めるだけに、影響は大きい。

 これらの国々は自国の漁業者に対し、給付金や低利の融資、燃料代の割引など、直接的・間接的に幅広い補助を行っている。

 シュミット氏は、「TPP参加国に我々が主張しているのは、持続可能な限度を超えた漁獲につながる有害な補助を段階的に廃止することだ」と訴える。

◆ 3. 違法な野生動物製品に対し、協定は十分に強い態度を取っていない

 象牙やトラの毛皮など絶滅危惧種を材料とした製品に対し、自然保護団体は、国際法の強制力をさらに確実なものにする規定が新たな貿易協定に盛り込まれるよう希望している。

 参加国は既に、絶滅危惧種の国際取引を禁じたワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)に加盟しているが、「我々の知る限り、その強制力は100%ではない」とシュミット氏は話す。

◆ 4. 協定では森林の違法伐採防止策を十分講じていない

 絶滅の危機にある多くの樹木が世界中で切り倒されており、しばしば公園などの立ち入り禁止区域で伐採が行われている。暗闇に紛れて伐採されることもある。

 NRDCや提携団体はTPPに調印する各国に対し、違法に伐採された木材を材料とした製品の輸入を禁じる法律を制定するよう求めている。

Photograph by Mattias Klum, National Geographic

文=Brian Clark Howard

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