コーヒーを飲んで記憶力アップ

2014.01.15
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1杯のカプチーノ(写真)に含まれるカフェインが、記憶の強化に役立つかもしれない。

PHOTOGRAPH BY BOB SACHA, NATIONAL GEOGRAPHIC
 朝の目覚ましにコーヒーや紅茶を飲む8割のアメリカ人にとって、カフェインを摂ると気分がシャキッとするというのは目新しい話ではない。しかし、メリーランド州ボルティモアにあるジョンズ・ホプキンス大学のマイケル・ヤッサ(Michael Yassa)氏(現在はカリフォルニア大学アーバイン校の神経生物学准教授)らは、カフェインの別の効果を特定した。記憶を強化するのだ。 ヤッサ氏らの研究は、カフェインが、摂取から24時間後に人間の記憶を強化していることを明らかにした。この発見についてヤッサ氏に話を聞いた。

◆カフェインが記憶に良い効果をもたらすことは、これまでの研究でも示唆されていました。今回の研究では何が新しく分かったのでしょう?

 私たちは、動物ではこの効果があるだろうと、しばらく前から考えていました。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のセリーナ・ドゥデク(Serena Dudek)氏は、カフェイン入りの花蜜を吸ったミツバチが花の香りの記憶を強めることを証明しました。けれども、人間を対象にした調査では、これまではっきりした結論は得られませんでした。カフェインを、記憶検査の前に投与していたからです。そのため、検査結果に、覚醒度や注意の集中度への影響といったほかの因子が入り込んでしまった可能性があります。

 そこで、ふだんはカフェインを摂らない被験者を集め、何枚かの画像を見せてから5分後に、カフェイン200ミリグラムの錠剤かプラシーボ(偽薬)のどちらかを飲んでもらいました。そして24時間後に記憶の検査をしたところ、カフェインを飲んだ被験者の方が画像をよく覚えていたのです。

◆カフェインがドイツの化学者の手で初めてコーヒー豆から分離されたのは、19世紀のことです。カフェインが働く仕組みは、詳しく分かっているのでしょうか?

 いくつかの仕組みがあります。カフェインはアデノシン受容体に作用して、心拍、覚醒度、血圧を上昇させます。クマに出会ったときに起こる闘争-逃走反応と呼ばれるものです。「アドレナリンが出た」と言うときに身体の中で起こっているのが、これです。また、カフェインは脳の中の海馬という小さな領域にも作用します。海馬は、長期記憶と短期記憶に重要な役割を果たしています。

◆カフェイン200ミリグラムというと、コーヒーをどのくらい飲めばいいのでしょう?

 エスプレッソ2杯くらいですね。

◆では、この結果を受けて、みんなで急いでスリーショット(エスプレッソ追加)のグランデ・ラテを注文するべきなのでしょうか?

 こういった飲み物には大量の砂糖が入っていることをお忘れなく。私もずっと前からコーヒー党ですが、これから、飲む量を倍にしようとは思いません。

◆今回の被験者は、ふだんコーヒーを飲まない人たちということですが、カフェインが世界で最も多くの人が使用している精神活性薬物だということを考えると、十分な数の被験者を見つけるのは大変だったのでは?

 実際、難しかったです。それに、正直な人を見つけるのも。あらかじめ唾液を使ってカフェインの検査をしたのですが、不合格にしなければならない人もいました。

◆カフェインの悪影響としては、どのようなものが?

 大量に摂取すると、イライラして、頭痛が起こります。実際に、過剰摂取で命に関わることもありえます。カフェインは刺激物です。今回の研究結果で、カフェインを無制限に摂るお墨付きが出たと捉えるべきではないと考えます。

◆将来の応用はどうでしょうか。カフェインがアルツハイマー病や痴呆症の治療薬になる可能性はあるでしょうか?

 カフェインがそういった病気の進行を抑えるとは思いません。しかし、リスクのある人には役に立つかもしれません。次の段階は、脳の画像化技法を利用して、脳のメカニズムについて研究を進めることです。

 今回の研究論文は「Nature Neuroscience」誌オンライン版に1月12日付で掲載された。

PHOTOGRAPH BY BOB SACHA, NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Cathy Newman

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