海洋哺乳類の“混獲”、米で規制強化

2014.01.10
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水揚げされたカニ。海洋哺乳類の「混獲」に関する漁業規制は、国や地域ごとにさまざまだ。

Photograph by Gerald French, Corbis
 最近発表されたレポートによると、世界各地で用いられる危険な漁法により、多数のアザラシやイルカ、クジラなど海洋哺乳類が犠牲になっているという。保護団体は、輸入魚介類を大量消費するアメリカが規制を強めるべきと主張している。 アメリカの環境保護団体、天然資源保護協会(NRDC)のレポート「純損失:外国漁業における海洋哺乳類の死亡」によると、毎年65万頭以上の海洋哺乳類が、違法な網に拘束されたり、延縄(はえなわ)の釣り針に絡まるなどして、深刻なダメージを受けているという。

 国外で捕獲された大量の魚介類は、国内のシーフード愛好者の胃に納まることになる。「アメリカは魚介類消費量の91%以上を輸入しており、その半数は天然物だ。グローバル市場にとって無視できない量まで拡大している」と、レポート執筆者ザク・スミス(Zak Smith)氏は述べる。

 65万頭のうち、輸入海産物に直接関係する割合を正確には把握できないが、「アメリカ市場の規模を考えるとその影響は大きい」とも主張。

◆クジラ、イルカ、アシカへの影響

 レポートによると、危機にさらされている海洋哺乳類は、地中海のマッコウクジラ、インド洋のハシナガイルカ、ニュージーランドアシカなどで、違法な漁業はカナダからスリランカまで広がっている。混獲による死亡を防ぐための法的規制も、地域によってまちまちだ。

 デューク大学の海洋生物学者アンドリュー・リード(Andrew Read)氏は報告書の執筆には関わっていないが、「混獲は海洋哺乳類にとって最大の脅威だ。絶滅の危機に瀕している種もある」と語る。北大西洋のセミクジラや、世界最小のネズミイルカ、コガシラネズミイルカは特に漁業がもたらすリスクが大きく、メキシコ、カリフォルニア湾の生息数も減少している。

「モラルの問題も忘れてはならない。釣具を何年も引きずって泳ぎ続ける大型のクジラは、長期にわたる苦痛にさいなまれることになる」とリード氏。

◆不法漁業の取り締まり

 NRDCのスミス氏によると、アメリカの海産哺乳動物保護法(Marine Mammal Protection Act)では、網の開放や安全な釣り針など、保護措置を無視した漁法で捕獲された魚の輸入を禁じている。「しかし、残念ながら、この規制は40年間、実際には施行されていない」と同氏は指摘する。

 一方、アメリカの漁業を監督する米国海洋大気庁(NOAA)海洋漁業局法執行部の広報官コニー・バークレー(Connie Barclay)氏は、「1972年の同法施行以来、局員や代理業者によるパトロールを実施し、漁船に同乗して監視ている」と反論。

「違反の内容に応じて適切な措置を取っている。罰則は、口頭での注意から罰金や懲役刑まで多岐にわたる」とメールで回答を寄せた。

「水産業界への働きかけや研修を通じて、コンプライアンス遵守の姿勢を向上させ、犯罪の取り締まりも集中的、効率的に行っていきたい」とバークレー氏は説明する。

 NOAA海洋漁業局の外交問題専門家ニーナ・ヤング(Nina Young)氏によると、同局では現在、輸入魚介類に関する規制の改訂に取り組んでいる。「国内規制に基準を揃えるため」という。

 新しい規則は今後6カ月以内に草案が発表され、パブリックコメントの募集期間も設けられる予定だ。

Photograph by Gerald French, Corbis

文=Brian Clark Howard

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