銀河団「エイベル2744」の画像は、銀河団をとらえた画像としては観測史上最深のものだ。

Photograph by NASA, ESA, and J. Lotz, M. Mountain, A. Koekemoer, and the HFF Team (STScI)
 ハッブル宇宙望遠鏡のチームは1月7日(米国時間)、これまで観測された中で最も古い、約132億年前の銀河の画像を公開した。最初期の恒星が誕生した当時の混沌とした宇宙を垣間見せてくれる、興味深い画像だ。 これらの画像は、新たな観測プログラム「ザ・フロンティア・フィールズ」(The Frontier Fields)の最初の成果だ。

 宇宙最初期の恒星について解明することは、われわれの天の川銀河を含む銀河がどのようにして形成され、また、太陽のような恒星がどのようにして銀河内に存在するようになったのかという疑問の解明につながる。

 宇宙は今から約137億年前に誕生した。そしてハッブル宇宙望遠鏡は、初期宇宙により近い時代の銀河を1995年から観測している。その最初の成果が「ハッブル・ディープ・フィールド」の画像だ。この画像は、北斗七星の方向を43時間にわたり観測して得られたもので、120億年以上前の銀河の姿がとらえられた。

 そして今回、ワシントンD.C.で開催中のアメリカ天文学会(AAS)会合で発表された最新画像は、以前に最古とされた銀河の画像よりさらに5億年ほど古い銀河の姿をとらえている。

◆最初のフロンティア

 このような初期の銀河は、「明るい青色の塊で、密集し、小さく、そして至るところに存在した」と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)の天文学者ガース・イリングワース(Garth Illingworth)氏は述べる。同氏は今回、ハッブルとNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡の両方で観測した、この時期の驚くほど明るい4つの銀河について発表した。

 これら初期の銀河は、質量が天の川銀河の約1%しかなかったが、恒星を生み出す頻度は、現在の天の川の約50倍にのぼったと考えられる。

「現在のわれわれの銀河を理解するためには、これら最初期の銀河の形成過程について理解することが非常に重要だ」と、アメリカ、バーモント州にあるミドルバリー大学の天文学者エイラット・グリックマン(Eilat Glikman)氏は述べる。

◆重力レンズ

 アルベルト・アインシュタインが100年前に示したように、重力は光を屈折させる。ハッブルのフロンティア・フィールズ初の画像は、数百個の銀河が小さく寄り集まっている銀河団「エイベル2744(Abell 2744)」の重力を利用して、それより遠く古い銀河の光を屈折させている。

 この屈折効果は古い銀河の光を収束し、本来の10~20倍に増幅して見せる。この重力レンズによって、ハッブルはより遠く古い銀河を観測することが可能になる。

「フロンティア・フィールズから得られる科学的知見は、膨大な量にのぼるだろう」と、マリア・ミッチェル天文台の天文学者マイケル・ウェスト(Michael West)氏は述べる。ウェスト氏は今回の観測チームには参加していない。「多くの天文学者がこのデータを手に入れるのを心待ちにしている!」。

 しかしあいにく、重力レンズ効果は古い銀河の姿をも“お化け屋敷の鏡”のように歪めてしまうと、ウェスト氏は述べる。「誰かの顔を、サーカスのお化け屋敷の鏡に映る、歪んだ状態でしか見られないようなものだ。しかもそれだけを見て、その人の実際の顔を絵に描かなければならない」。

 とはいえ、天文学者は重力レンズがもたらす歪みの程度を推測し、遠方の銀河の姿とその特性を再構築することが可能だ。

 目下のところ、これらの画像から見えてくる初期宇宙の姿は、宇宙誕生から最初の40億年間に、恒星が数多く形成され、銀河がどんどん大きく成長していったというものだ。

 また、初期の恒星を観測することに関して、ミドルバリー大学のグリックマン氏は、「氷山の一角がまるで氷山の底部のように見えるので、注意が必要だ」と述べる。それでも、これら初期の銀河は「初期の宇宙で何が起こっていたのかを知る、非常に良い手がかりだ」という。

Photograph by NASA, ESA, and J. Lotz, M. Mountain, A. Koekemoer, and the HFF Team (STScI)

文=Dan Vergano