物体の音波浮揚、3次元操作に成功

2014.01.08
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4つの超音波スピーカーに囲まれた60センチ四方、高さ30センチの空間。中央に白いプラスティック粒が十字になって浮揚しており、前後左右上下に移動できる。

Image captured from VIDEO by Yoichi Ochiai, et al./University of Tokyo
 東京大学の研究チームが、超音波で浮上させた物体を3次元的に操作する世界初の実験に成功した。空中に舞い上がった小さな物体を、上下左右あらゆる方向に動かすことができる。 音波浮揚は1940年代からが試みられており、アイデア自体はよく知られている。その後、研究が停滞した時期もあったが、電子機器の発達に伴ってこの10年で再び活発化している。研究成果をアピールするため、ハチやアリ、魚などでデモを実施する研究者も後を絶たない。

 落合陽一氏率いる東大の研究チームは、285個の音響トランスデューサー(変換器)を組み込んだ超音波スピーカーで、プラスチック・ビーズの3次元操作に成功。コーネル大学図書館に提出した研究論文で、「音波浮揚の操作性が格段に向上した」と実績を誇っている。

 アメリカ、イリノイ州のマテリアルズ・デベロップメント(Materials Development)社で音波浮揚を研究するリック・ウィーバー(Rick Weber)氏も、「研究が大きく前進した。音波浮揚の新たな可能性に期待したい」とコメントしている。

 昨年、スイスの研究チームが2次元操作のデモに成功したばかりで、この分野の急速な進歩に同氏は驚いている。

◆格子状の音波

 東大チームが実験に投入したのは、ビーズ、電子機器の部品、マッチ棒、ネジ、ナットやアルコールの水滴など身の回りの品々だ。

 52センチ幅の浮揚装置の中で、上下、左右、前後に大きく動かして見せた。

 四方を囲むスピーカーアレイ(トランスデューサーの配列)が発する超音波は、人間の耳では聞こえない。

 研究チームは、対象物を取り囲むように4枚のパネルスピーカーを配置。音波の強度を同期的に調整して、ビーズなどを簡単かつ自由に操作する実験に成功した。

 音響トランスデューサーの配列は、格子状に並んだ点を空間に作り出す。この焦点で音波が増幅し、物体が浮揚する圧力が生み出される仕組みだ。

 つまり、空間に並んだ焦点が、ビーズなどが浮遊する際の支えとなるのである。

◆サラダの浮揚

 ウィーバー氏は、3次元移動が成功したポイントとして、前後左右に増やしたトランスデューサーと、操作を容易にしたコンピューターの処理能力向上を挙げている。

 2013年、アメリカのアルゴンヌ国立研究所は、物体を縦方向に浮かべる浮揚デモを実施。塩やバジルオイルの包みを順序よく並べて、サラダの出来上がりとしゃれ込んだ。同氏はこの実験を引き合いに出し、「音波を格子状に発する手法は、音波浮揚の研究では標準的」と指摘している。

 また、「3次元操作を駆使すれば、様々な工程で従来より多くの材料の組み合わせが実現するだろう。しかも、容器など一切使う必要がない」ともコメント。

◆超高純度の医薬品

 この技術は、超高純度医薬品の試験に応用される可能性が高い。音波浮揚を利用し空中で液体を分析できれば、結晶化や不純物が混入する失敗を避けられる。

 また、研究論文は、「重力の影響下で浮上させる手法は、無重力環境に応用できる可能性もある」という言葉で結ばれており、宇宙空間での利用も念頭に置いているようだ。

 例えば地球からの遠隔操作で、宇宙ステーション製の医薬品や超高純度結晶が実現するかもしれない。

Image captured from VIDEO by Yoichi Ochiai, et al./University of Tokyo

文=Dan Vergano

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