ナキウサギ、“食糞”で温暖化に適応

2013.12.27
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アメリカナキウサギは、繊維質で栄養価の低いコケ類を食べて地球温暖化に適応している。

Photograph by James Hager/Robert Harding/Corbis
 地球温暖化が進む中、保全生物学の専門家は、気温が低い地域に暮らす動物の将来を心配している。例えば、北米やヨーロッパ、アジアの山岳地帯に生息する多毛のナキウサギもその1つだ。しかし、アメリカナキウサギ(学名:Ochotona princeps)は、かなり風変わりなエサのおかげで、厳しさを増す環境を克服できるかもしれない。 新たな研究によると、低地のナキウサギは、栄養価の低いコケ類を食べて繁栄しているという。彼らは、温暖化する環境に対する行動適応能力を備えているらしい。

 通常、ナキウサギ科に分類される動物は寒冷な高山地帯に生息する。アメリカナキウサギは、オレゴン州ポートランド郊外にあるフッド山(標高3429メートル)の岩の多い斜面でもよく確認されている。ノウサギなどと同じウサギ目に属し、大型のネズミ程度の大きさで、小さなテンジクネズミとそっくりだ。

 代謝が活発で体温も高い。大きな腹部や短い四肢、小さな耳、短い尾がほぼ球状にまとまり、加えて灰褐色の厚い毛皮が体温の低下を防いでいる。保温力が高く、摂氏25度を上回る気温に3日以上さらされると、死亡する場合もある。

 ユタ大学大学院博士課程のジョアンナ・バーナー(Johanna Varner)氏にとって、フッド山に近い低地、コロンビア川渓谷での目撃報告は寝耳に水だった。ナキウサギが好むフッド山の環境とは、あまりにもかけ離れているからだ。

 フッド山で雪のない期間は3カ月に過ぎない。ずんぐりしたナキウサギは短い夏の間に走り回って、できるだけ多くの草花や小枝を集める。長い冬の間に少しずつ食べられるよう、食料貯蔵所“干し草の山(haypile)”を作り上げるのだ。一方、コロンビア川渓谷が雪に覆われるのは1年のうち3週間程度。バーナー氏は、現地での暮らしぶりや、その食生活を調べることにした。

 オレゴン州に到着した同氏は、フッド山と渓谷のナキウサギの調査に取りかかる。研究メンバーと交代で2時間ずつ双眼鏡で観察、成体の食料を突き止めた。フッド山とは異なり、コロンビア川渓谷のナキウサギはコケ類を食べている。栄養がほとんどないコケとは、バーナー氏も想定外だった。

「哺乳類が大量に摂取するには栄養価が低すぎる。繊維質が80%を占め、ほとんど紙と同じだ」とバーナー氏は話す。

◆自分の糞を食べて栄養摂取

 コケ類の栄養を余すことなく摂取するには、ナキウサギの食糞(しょくふん)という習性が欠かせない。「自分の糞を食べる行動を指す」とバーナー氏。

 ナキウサギは小さな硬い糞の塊のほかに、より大きく湿り気を帯びた“盲腸糞”も排出する。消化途中のコケと胃腸の微生物が混ざり、非常に栄養価が高い。再び摂取すれば、コケを直接消化する微生物のおかげで、より多くの栄養を抽出できるという。

「盲腸糞にはコケの6倍も栄養がある。消化途中で反芻するするウシと同じアイデアだ」とバーナー氏は評価している。

 今回の調査結果は、「Journal of Mammalogy」誌オンライン版に12月17日付けで発表されている。

Photograph by James Hager/Robert Harding/Corbis

文=Carrie Arnold

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