着陸から1年半、キュリオシティの成果

2013.12.10
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“赤い惑星”を走行するNASAの火星探査車キュリオシティ。これまで数々の重要な知見を提供してきた。

Photograph courtesy NASA/JPL-Caltech/MSSS
 NASAの探査車キュリオシティが火星に降り立ってから約1年半。膨大な量のデータを送信し続けており、火星の実態を調査、解明する上で多大な貢献を果たしている。 さまざまな側面をそれぞれ異なる科学的視点から取り上げた6本の論文が「Science」誌に発表され、30〜40億年前の様子をはじめ、赤い惑星に関する理解がさらに深まりつつある。

「ゲイル・クレーターと火星についてわかっている事実をすべて合わせると、真の姿が少しずつ明らかになっている」と、NASAゴダード宇宙飛行センターに所属し、論文数本の共著者であるパン・コンラッド(Pan Conrad)氏は述べる。

 本記事では、「Science」誌に発表された6本の論文の内容を基に、火星の隠された真実に迫っていく。

◆ 1. かつて生物が生息可能な環境だったことを確認

 河川がゲイル・クレーターに流れ込んでいた痕跡を確認した調査チームは、この領域に湖が存在していたと報告している。その表層水と、数百メートル下を流れていた地下水があれば、微生物が生き延びられたという。

 ゲイル・クレーターが温暖湿潤で居住可能だったのは、およそ35〜40億年の昔。地球で生命が誕生した時期に近い。

◆ 2. 過去の川床の跡を発見

 しかもその水は、専門家が不可能だと考えていた形で存在していたという。 火星を周回する衛星が担う遠隔観測と連携を果たしたキュリオシティの貢献度は特筆に値する。過去の火星に水が存在し、ゲイル・クレーターに流れていたことを示す強力な手掛かりが発見されている。

 その結果、はるか昔の小川や水路、デルタ、湖を示す幾重もの地層に関する確たる証拠が得られた。

◆ 3. 有機化合物を特定

 重要な目標の1つである火星の炭素系有機化合物の調査は、現在難航しており、しばらくは悪戦苦闘が続くとみられる。

 小型の化学実験装置、火星サンプル分析装置(SAM)で6種類の有機化合物が特定されたが、その起源は明らかになっていない。

「火星特有の化合物とは断言できない」と、NASAジョンソン宇宙センターの所属で、論文の著者の1人であるダグラス・ミング(Douglas Ming)氏は話す。

◆ 4. 自然放射線量の測定

 宇宙線と太陽からの放射線がダイレクトに降り注ぐ地表は、生物の生存が不可能な状態だ。キュリオシティ搭載の「レディエーション・アセスメント・ディテクター」(RAD:放射線評価検出器)により、地表の放射線量が初めて測定され、宇宙飛行士にとって重大な問題になると判明。

 RAD担当の主任科学者、ドナルド・ハスラー(Donald Hassler)氏は別の論文に、このレベルの放射線に暴露すれば、表面または地下数メートル以内に生息する微生物は、数百万年以内に死に至ったに違いないと記している。

◆ 5. 放射線が正常な化学物質を分解

 専門家の多くは、火星表面の有機物の特定が困難な理由として、放射線による炭素化合物の影響を挙げている。

 カリフォルニア工科大学のケネス・ファーリー(Kenneth Farley)氏は、放射性年代測定の結果、イエローナイフ湾の地表は約8000万年、放射線にさらされていると報告。

◆ 6. 急がば回れ

 着陸後のキュリオシティは、ゲイル・クレーターの中心にあるシャープ山に直行する予定だったが、実際は大幅に遅れている。出発して480日以上が経過しているが、到着は数カ月も先になる見込みだ。

 遅れの理由はイエローナイフ湾に立ち寄ったためだが、当地はデータの宝庫でもあった。キュリオシティは現在、高さ約5000メートルのシャープ山を目指して「高速輸送ルート(Rapid Transit Route)」を走行中。大半の時間を移動に費やしているため、調査には絶好とみられる多くの地点を素通りしている。

 最初に発見されたハビタブルゾーンを分析した調査チームは、放射線の影響が少ないサンプル採取の候補地に関するデータを基に、今後も探査を続行する予定だ。有力視されているシャープ山に接近するにつれ、火星の有機物調査は佳境に入ることになる。

Photograph courtesy NASA/JPL-Caltech/MSSS

文=Marc Kaufman

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