蛍光色に光る動植物

2013.11.12
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クラゲから取った蛍光タンパク質によって怪しい光を放つ“闇で光るアイスクリーム”

Photograph by Lick Me I'm Delicious
 10月30日、イギリスのアイスクリーム・メーカー、リック・ミー・アイム・デリシャス(「私をなめてみて、おいしいから」の意味)は暗闇で光るアイスクリームを発表した。発光クラゲから取った蛍光タンパク質を使っているという。アイスクリームをなめると、口の中とアイスクリームの水素イオン濃度(pH)の違いによって(口の中は弱アルカリ性、アイスクリームはより中性に近い)、カルシウム活性化タンパク質が反応して光り出すという仕組みだ。 暗闇で光るアイスがどんなものか実際に確かめてみたいという人もいるだろう。念のためにあらかじめ断っておくが、1スクープ食べるのに220ドル(2万1800円)ほどかかるという。クラゲからタンパク質を取り出す費用は決してお安くないというわけだ。だが、ご安心あれ。このごちそうアイスを発明した食品科学者、チャーリー・ハリー・フランシス(Charlie Harry Francis)氏は、食べる分には安全だと太鼓判を押している。

 光るアイスがきっかけとなり、発光する生体にはほかにどういったものがあるのか探ってみることにした。

【精子】まるで闇に瞬く花火のようだ。生殖生物学の研究のために遺伝子組み換えを行ったオスのミバエの赤色と緑色の精子を前にして、多くの科学者たちがそう思った。精子たちはただ何となく泳いでいるわけではない。精子を貯蔵するメスの生殖管の中で、ライバルのオスの精子と複雑な争いを繰り広げていることが分かる。つまり、生殖競争は交尾が終わってからもずっと続いているというわけだ。暗闇の中の小さな光がなければ、このような結論を導き出すことはできなかっただろう。

【キノコ】ブラジルの熱帯雨林の奥深くに生えるミケナ・ルクセテルナ。モーツァルトのミサ曲「レクイエム」の終章「Lux aeterna」に由来するその名が示すように、まさしく永遠の光を放っている。うっそうとしたジャングルの中、まるで夜の星のように美しく光るこの小さなキノコに出会ったときの感動について、研究者たちは興奮気味に語っている。幻想的な光は、茎を覆っている粘液と共に、キノコの捕食行動を助けていると思われる。光をめがけて飛んできた虫は、くっついて離れられなくなり、きのこの餌になるというわけだ。

【サンゴ礁】南太平洋ソロモン諸島のサンゴ礁で夜泳ぐのは実に感動的な体験だ。サンゴ礁は特殊なタンパク質を吸収し、蛍光色の光を発している。生体発光と呼ばれるこのプロセスは単なる光のショーに留まらない。医学界では、この赤外線発光タンパク質を脳内の働きを解明するのに役立てようという動きがある。

【動物】闇で光るヒツジとネコがクローン技術により誕生した。似たような話として思い浮かぶのが、「シャーロック・ホームズ」シリーズの「バスカヴィル家の犬」だ。(ネタバレ注意!)同作には、スコットランドの荒れた湿地帯で、猟犬が歯に塗られたリンによってあたかも発光しているように見えるというエピソードが出てくる。闇で光る動物は、退行性筋疾患をはじめとする遺伝性疾患の解明に役立つのではないかと期待されている。緑色蛍光タンパク質(GFP)を使った研究は、何もマッド・サイエンティストたちの夢の話というわけではない。GFPの発見者である下村脩氏は、その功績が称えられ、2008年にノーベル化学賞を受賞した。

 一方、生まれながらにして発光する動物も存在する。たとえば、サソリはブラックライトを当てると、あやしい緑色の光を放つ。表皮にある窒素化合物によって発光することは分かっているものの、何のために光るのかはいまだ謎のままだ。

Photograph by Lick Me I'm Delicious

文=Tanya Basu

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