1万年前から? 英で蛙食の証拠発見

2013.11.08
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『ラルース料理大辞典』によると、カエルの体で食べられる部位は脚だけなのだそうだ。

Photograph by Jean-Daniel Sudres, Hemis/Corbis
 イギリスではしばしば、フランス人はカエルを食べるといって侮蔑されてきた。 そこへ驚きのニュースが飛び込んできた。イギリスのウィルトシャー州にあり、ストーンヘンジからもほど近い考古学の発掘現場から、明らかに何らかの形で調理された痕跡のあるカエルの骨が発見されたのだ。

 この骨のかけらはほぼ1万年前のものと見られる。「これはフランス最古の蛙食の記録よりもはるかに古い」と、発掘を率いたバッキンガム大学のデイビッド・ジェイクス(David Jacques)氏は言う。「フランスでカエルの脚が食べられていたことを示す最古の記録は、12世紀のカトリック教会の年代記に見られる」。

 人類による蛙食の歴史は謎に包まれている。しかしジェイクス氏は、狩猟採集民がカエルの仲間などの小動物を口にしていたとしても驚くには当たらないと言う。「当時は有用なタンパク源であり、(より大きな動物に比べれば)手軽に調理できる一種のファストフードであったことは、十分に考えられる」。

 では、つましい食材であったものが、やがて豪華な料理に使われるまでには、どうした経緯があったのだろうか。文献に残るレシピを見ると、遅くとも18世紀には、カエルの脚はフランスで高級料理に使われていたことが分かると、フランスのフードライターであるベネディクト・ボージェ(Benedict Beauge)氏は言う。だがそこに至るまでの経緯は解明が難しい。その理由のひとつは、数世紀前までは一般大衆向けのレシピ本などほとんど存在しなかったためだ。

 イギリス人はカエルを好まないとの評判は、広く理解されている。イギリス人のアラン・デイビッドソン(Alan Davidson)氏は、『Oxford Companion to Food(オックスフォード食物必携)』の中で、カエルは「イギリス人にとっては、フランスの食生活の中枢をなすものと見なされている」と書いている。また「蛙食がなぜ特にイギリスで忌避されているのかは、やや不思議である。カエルの見た目が(人間にとって)醜いことが関係している可能性もあるし、カエルはヌルヌルしていて悪臭ただよう沼地に住んでいるといったイメージのせいかもしれない」とも書いている。

 フランスで出された『ラルース料理大辞典』にも、イギリス人の蛙食忌避が反映されている。カエルの脚は「通常、イギリス人には吐き気を催させる」と書かれているのだ。

 それでも、イギリスでも蛙食が好んで行われていたことを示す記録もいくつかは存在する。

 たとえば、17世紀イングランドの料理人ロバート・メイ(Robert May)による料理本『The Accomplisht Cook(料理名人)』には、生きたカエルを使ったパイのレシピが掲載されている。この料理は「大いなる歓喜をもたらし」、ご婦人がたを「小躍りして叫びださんばかりに」すると説明されている。

『ラルース料理大辞典』でも、19世紀のフランス人シェフ、ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエのイギリスでの逸話を紹介している。ロンドンのカールトン・ホテルで当時のイギリス皇太子の料理を担当したエスコフィエは、「暁のニンフの腿(cuisses de nymphes aurore)」と称してカエルの脚を出すことに成功したという。

 考古学者のジェイクス氏はもちろん、自身の発見が、蛙食の起源はフランスかイギリスかという次元の話であるとは考えていない。「むしろ、中石器時代にイギリスに住んでいた人々はすべてフランスとその周辺地域にルーツを持っているということも考慮すべきだ」とジェイクス氏は言う。

 またジェイクス氏は、かつてイギリスはヨーロッパ本土と陸続きであり、紀元前5500年頃に大陸から分離したのだとも指摘する。「今回のことは、“英仏和親協商”のチャンスと見るべきかもしれない。当時は私たちもみんなフランス人だったのだ!」

Photograph by Jean-Daniel Sudres, Hemis/Corbis

文=Catherine Zuckerman

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