腕だけだった謎の恐竜、胴体を発見

2013.11.06
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腕の長さが2.4メートルある巨大な恐竜、デイノケイルス・ミリフィクス(Deinocheirus mirificus)のイメージイラスト。

Photograph by De Agostini Picture Library, Getty Images
 およそ50年前に両腕の化石だけが見つかっていた、謎の恐竜の胴体部がついに発見された。背中の帆のような背ビレまたはコブなど全身の形態や、植物食の生態が明らかになった。 学名デイノケイルス・ミリフィクス(Deinocheirus mirificus、「尋常ではない恐ろしい手」)は、腕の発見以来、研究者の悩みの種だった。

 全長2.4メートルの巨大な両腕には指が3本あり、鉤爪が付いている。細かな骨の破片もいくつか発見されたが、全体像は想像の域を出なかった。

 しかし先週、ついにその真の姿が明らかになったという。アメリカのロサンゼルスで開催された古脊椎動物学会(SVP)の年次会合で、韓国地質資源研究院(KIGAM)の古生物学者イ・ユンナム(李隆濫)氏が、「デイノケイルス本体の化石がモンゴルで発見され、想像とはまったく異なる形態だった」と発表。聴衆の関心を一気にさらった。

 今回の発表は、恐竜時代の古代モンゴルが非常に珍しい環境だったと示唆している。巨大な草食恐竜が隆盛を極める中、ナイフのような歯を持つ肉食恐竜が歩き回っていた可能性が高い。

◆ジグソーパズルの発見

 デイノケイルスの名前の由来となった巨大な両腕は、1965年にモンゴル南部の約7000万年前の岩石層から発掘された。

 この恐竜の生態を巡って、肉食または草食、あるいは雑食なのかと、研究者たちはさまざまな推測を試みた。とがったクチバシを持ち、首が長く、二足歩行のオルニトミモサウルス類、別名「ダチョウ恐竜」の大型種の1つという説が有力視されたこともある。

 結論が出ないまま時間だけが過ぎ、有力な手掛かりは一切見つからなかった。

 発掘現場での再調査も試みられたが、肋骨(ろっこつ)の小さな破片に留まっている。破損の状況から、タルボサウルスという巨大な肉食恐竜のエサになったようだ。

 腕以外の化石がほとんど残らなかったのも無理はない。

◆発掘続行

 ついにその執念が報われる時が来た。イ氏の研究チームが、元の発掘現場の近くでデイノケイルス2頭分の化石を発見。頭部や脚部は既に盗掘されていたが、胴体部はほぼ完全な状態で手に入った。

 それぞれ2006年と2009年の出土で、長年謎だったこの恐竜の姿をイ氏はこのように述べている。

「オルニトミモサウルス類の1種と確定した。全長はおよそ11メートル、直立時の全高は5メートルに達する」。

 したがって、デイノケイルスは、史上最も背が高い獣脚類ということになる。

◆化石で判明した驚きの事実

 ただし、瞠目すべきはサイズだけではない。脊椎骨を分析した結果、以前の想像とは異なり、帆のような背ビレを持っていた可能性があるという。

 同様の形態を持つオルニトミモサウルス類は皆無だが、ワニのような鼻と口のスピノサウルスやスコップのようなクチバシをしたオウラノサウルスなど、遠い縁者には背中の突起に帆が張られた恐竜がいる。現世のバイソンのようなコブの可能性も考えられるという。

 また腹部の化石の辺りに、角がすり減った小さな石が1000個以上見つかっている。「硬い植物をすりつぶすために飲み込んだ胃石と考えて間違いないだろう」。

◆学会への衝撃

 イギリスのスコットランドにあるエディンバラ大学の古生物学者、スティーブン・ブルサット(Stephen Brusatte)氏は次のように語る。「SVP年次会合の発表者は、新しい化石を“隠し玉”として用意するのが通例だ。予想はいつも裏切られるが、今回ほど驚いたことはない」。

「残念ながら頭部は失われていたそうだが、今後の発見に期待したい。風変わりな胴体にふさわしい、ユニークな形態かもしれない」とブルサット氏は話す。

 真実のベールの下には新たな謎が隠れているという。どうやら研究者たちは、これからもデイノケイルスに振り回されそうだ。

Photograph by De Agostini Picture Library, Getty Images

文=Brian Switek

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