頭上にフックのような突起があったとされている古代のサメ。このサメの仲間をはじめとするいくつかの小型のサメが、大絶滅を生き延びて恐竜の時代まで生息していたことが化石によって確認された。

Image courtesy Alain Beneteau 2013
 古代の海にはさまざまな小型のサメの仲間が泳いでおり、中には頭上にツノのような器官を備えたものまでいたという。最新の研究で、これらのサメは従来考えられていたよりはるかに長く、約1億2000万年前頃まで生き延びていたことが明らかになった。多くの生物種が絶滅した時期にも、深海がシェルターの役割を果たしていたものと考えられる。 約2億5200万年前のペルム紀(二畳紀)末から三畳紀初期にかけて、地球上の海洋生物のおよそ90%が死に絶える大絶滅が起きた。

 火山の噴火、海中の酸素の減少、深刻な気象変動などのさまざまな事態に見舞われたこの時期は、化石記録を見る限り、地球上の生命の存続にとって最も困難な時代であった。 この時期には、長く鋭いT字型の歯を持つクラドドント類と呼ばれる初期のサメの仲間も多数絶滅したと考えられていた。

 ところが、スイスのジュネーブにある自然史博物館のギヨーム・ギノー(Guillaume Guinot)氏の率いる国際的なチームの研究によって、このサメの仲間が大絶滅の後も、少なくともさらに1億7000万年は生き延びていたことが明らかになった。つまり、恐竜の時代にも生息していたことになる。

「思ってもみなかったことだ。これらの古代のサメが見つかったのは本当に素晴らしい。実を言うと、もっと新しい時代のサメを探していたんだが」とギノー氏は言う。

◆大絶滅を生き延びた古代のサメ

 チームの報告によると、フランス南部の石灰岩の地層から、クラドドント類のサメの歯の化石が複数見つかった。3種の新種が確認され、うち1種の歯はこれまで発見されているどの種とも似ていないという。

 これらのサメが大絶滅の後も1億7000万年もの間生き延びていたという発見は、今回の研究に参加していない研究者からも驚きをもって迎えられた。

「たとえて言うと、ティラノサウルス・レックスの子孫が(現代に)生きた状態で見つかったようなものだ」と、古代のサメを専門とする在野の研究者ジョン・ポール・ホドネット(John-Paul Hodnett)氏は言う。「チームの結論には同意せざるを得ない。間違いなくクラドドント類のサメの歯(の特徴)を備えている」。

「大絶滅を生き延びたものの、その後すぐに死に絶えたというだけなら、さほど驚くことではない」とイギリス、ブリストル大学の古生物学者マイク・ベントン(Mike Benton)氏は言う。「しかし中生代に入って(1億年以上)も生きていたとは興味深い。その長い期間にはおそらくかなりの希少種になっていたとしてもだ」。

◆3種それぞれの特徴

 これらのサメは小型で、体長はおそらく20センチ程度と考えられる。歯も小さく、幅1ミリほどしかない。

 それでも捕食者であることに変わりはなく、現在のイカの祖先や小型の魚類を食べていたのではないかとギノー氏は言う。

 チームが発見した新種の1つは、さらに古いファルカタスというサメに似た歯を備えていた。ファルカタスのオスは頭の上に平たく長い剣のようなヒレを持ち、求愛行動に使っていたと考えられている。

 新種の2つ目は、背中に2つのヒレを持つサメの仲間で、今日オーストラリア沿岸部で見られるポートジャクソンネコザメに似ている。

 新種の3つ目は歯の先端が整っている。クラドドント類ではこれまで確認されたことのない特徴で、むしろ現代のサメに近い。またこの歯は現代のサメと似たエナメル構造を備えている。これも驚きだとホドネット氏は言う。

「こうした特徴が(サメの)進化において登場したのは1度ではないということが明確にうかがえる」とホドネット氏は言う。つまり、進化においては途中経過は違っても、同じ歯の形状にたどり着くこともあるという指摘だ。

◆大絶滅を生き延びるために

 論文の著者であるギノー氏によると、これらのサメの歯の化石が見つかった石灰岩の地層は、1億2000年ほど前には深い海の底であったという。

 この事実からうかがえるのは、海中の酸素の減少が大絶滅の原因の1つであったにしても、一部の限られた海域ではサメやそのエサとなる生物が生き延びていたということだ。

 これらの小型のクラドドント類は、おそらく食生活を柔軟に変化させられたおかげで、深海でも沿岸部でも生き延びられたのだろう。

「捕食者として頂点に立つものではなく、さまざまなものを食べたのだろう。おそらくほかのサメも食べたかもしれない」とギノー氏は言う。

 クラドドント類の新種のサメに関する今回の研究は、「Nature Communications」誌に10月29日付で掲載された。

Image courtesy Alain Beneteau 2013

文=Dan Vergano,