イギリス、ブリストル大学ヒトと動物の関係学研究所(Anthrozoology Institute)所長で新刊『Cat Sense(ネコの感覚)』の著者でもあるジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)氏に、ペットのネコが受ける実際のストレスやその他の問題についてインタビューした。
◆まず、問題の“ストレスの研究”についてお尋ねします。ネコを撫でるとストレスを与えてしまうのでしょうか?
今回の論文はかなり誤って報道されています。たいへん興味深い研究なのに残念です。しかし、問題はすぐに解消されました。私はまず研究チームの一員だったイギリス、リンカーン大学のダニエル・ミルズ(Daniel Mills)氏に問い合わせました。彼らの研究結果は、「どんなネコでも撫でるとストレスを与える」とは述べていないと思います。一部のケースなのに、論文ではその点が示されていませんね。
ある種のネコが“何か”に対して不安を抱えている場合、分泌するストレスホルモンや、撫でられたときに神経質になる様子から状況に気づくことができる。これが論文の主旨です。ネコがストレスを感じるのは、撫でられたからではありません。生活環境の“何か”に対してイライラし、過剰反応しているのです。しかし、研究チームは、“何か”の正体を特定できませんでした。
◆ストレスを感じているとき、飼い主が注意すべき点は?
動物は健康状態が良くないときにストレスを感じます。一部の毛が抜けたり、特定の部位をやたらと毛づくろいするネコがいます。すると、かえって皮膚の一部がむき出しになったり、潰瘍化してしまいます。ストレスを紛らそうとしてさらに毛づくろいすると悪循環です。膀胱炎も典型的なストレスの原因ですね。ネコがよくかかる病気なんですよ。
しかし、ストレスを感じているという兆候は、簡単に見分けられない場合が多い。ネコはあまり感情を表に出さないからです。不機嫌なときでも、その気持ちを隠す傾向があります。それでもやはり、家具の下に潜ったり、クローゼットの上など室内の高いところに昇ったりして、長い時間隠れていたら、ストレスのサインである場合が多いですね。常に身を守れるポジションをキープしていないと、ネコは快適だと感じられないのです。
◆室内での暮らしに満足しているのでしょうか?
私の考えでは、生活スペースは広くなくても大丈夫です。ネコが求めているのは、基本的で安全で興味深い場所です。室内で飼う場合、飼い主は注意をよく払い、生活を楽しくするよう一層気を配る必要があります。
イギリスでは普通の野良ネコに加えて、ほとんどの家庭が放し飼いにしています。アパートよりも一軒屋に住む人が多いからでしょう。私の同僚は、スイスやフランスなどアパートが主流の国で、室内の飼いネコについて研究していましたが、大きな問題はないようでした。室内のネコが、突然ある種の精神的疾患にかかるなどの心配は無用です。その世界しか知らない場合には特にそうです。
Photograph by Stephen St. John, National Geographic Stock