嵐の前、混獲、群知能:最新の研究から

2013.10.09
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シイラを捕獲するために設置された延縄(はえなわ)針にかかったオスのヒメウミガメ(学名:Lepidochelys olivacea)。延縄がカメに絡まり、溺れさせてしまう。

Photograph by Bill Curtsinger, National Geographic
 学術界では日々重要な検証が行われているので、面白い研究でも紹介しきれないものが多数出現してしまう。この記事では、好奇心をそそられる研究を3つ、かいつまんで紹介する。取り上げるのは、嵐の前に甲虫がすること、延縄(はえなわ)漁の弊害、「群知能」という3つの話題だ。◆甲虫の嵐への備え

 嵐が来そうなとき、人間ならば窓を板でふさいだり、電池や水を買い置きしたりするものだ。だがキューカビ ット・ビートル(学名:Diabrotica speciosa)と呼ばれる甲虫の一種の場合、嵐が近づいたら交尾という大事 業に励むらしい。

 米オンライン科学誌「PLOS ONE」に10月2日に発表された論文によると、この甲虫は嵐の前触れである気圧の 降下を感知すると、研究に使用した26匹のオスのうち16匹までがメスに飛び乗るようにしてただちに交尾を始め たという。

 この場合、求愛行動は省略されたが、これらの個体もみな、気圧が一定のとき(つまり、“良い”気象条件の とき)には通常の求愛行動を示していた。

 体の小さな生物には強風や豪雨の影響が大きいため、一般的に嵐の際に昆虫の死亡率は高まる。この甲虫が普 段と異なる行動をするのは「生存の見込みが下がることを感知してのものである可能性がある」と論文には書か れている。

◆延縄漁の犠牲となるヒメウミガメ

 漁業のメリットとデメリットはよく知られている。経済効果が高く、数千億ドル規模の市場を有するので、多 くの漁船が世界中の海に乗り出している。しかし乱獲や、絶滅危惧種など本来の狙いとは異なる種を誤って捕獲 してしまうなどの問題は解決されていない。

 国際的な海洋科学誌「Journal of Experimental Marine Biology and Ecology」に今月掲載された論文では、 コスタリカでシイラなどを捕るために行われている延縄漁によって、多数のヒメウミガメやクロトガリザメなど も意図せず捕獲されていると指摘している。

 1999~2010年にかけて、6隻の中型漁船で調査を行ったところ、釣り針1000本当たり31匹のシイラが捕獲され ていた。これに次いで多く針にかかっていたのはヒメウミガメで、1000本当たり約9匹。その次はクロトガリザ メで、1000本当たり8匹であった。

 この数値から計算すると、研究対象となった11年の間に、350隻の船で約70万匹ものヒメウミガメを捕獲して きたことになる。またこの論文では、コスタリカ国内のヒメウミガメの営巣地のうち、ナンシテは1980年代に、 オスティオナルは2000年代に個体数が激減し、その後回復していないことも指摘している。

◆「群知能」なるもの

 現在アメリカ政府の一部機関が閉鎖しているのは、国民の選出した代議士の間で深刻な意見の相違が起こった ためだが、この研究は光明となるだろうか。ドイツとイギリスの研究チームによると、グループ内の個人の好み や意見がバラバラなほうが、グループ全体としてはより良い決断を下せるそうだ。

 群れの移動の行き先や食料を確保する場所など、グループ全体としての目標が同じである限り、その目標にた どり着く方法に関しては、意見がさまざまであるほうが、より賢明な判断を下せるという。

「American Naturalist」誌の2013年11月号に掲載予定のこの論文は、グループのメンバーのさまざまな条件下 での振る舞いを、コンピューター・シミュレーションを用いて検討したもの。わずかな情報しか与えられていな い不安定な環境のグループは、さまざまに異なる意見を取り入れて何をするか決断した場合のほうが、グループ の全員が同じ方法で目標を達成しようとした場合に比べて、優れた判断を示したという。

「今回の結果は、集団的意思決定から少数意見を排除すべきでない理由として、あらゆる係争の関係者にとって 有意義なものであり、さまざまな議論をもたらすだろう」と論文に述べられている。

Photograph by Bill Curtsinger, National Geographic

文=Jane J. Lee

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