銀河系ブラックホールに最近活動の痕跡

2013.09.25
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銀河系の中心にある超大質量ブラックホールは、200万年前には、現在の1000万倍ものエネルギーを放出していた。

Illustration courtesy Dana Berry, SkyWorks Digital/NASA
 銀河系の中心には、「火山」とも言うべき超大質量ブラックホールがある。この火山が現在活動を休止している理由について、天文学者は長年頭を悩ませてきた。 このほど発表された研究によると、どうやらその答えは、太陽の400万倍以上の質量を持つこの宇宙のモンスターが食事しているところを、私たちがちょうど見ていなかったから、というだけなのかもしれない。

 論文の共著者であるコロラド大学ボルダー校のフィリップ・マロニー(Philip Maloney)氏は、「200万年前に生きていて観測をしていたなら、状況はまるで違っただろう」と話す。

 その時代には「銀河系のブラックホールは今の1000万倍明るかっただろう。超大質量ブラックホールの光度が、相対的に言ってだが、これほど短い期間に、これほど桁違いに変化すると予想した者は1人もいないと思う」。

◆証拠は「化石痕跡」

 天文学者は、現在休眠中のブラックホールも、大昔にはアウトバースト(爆発的なエネルギー放出)を起こしたことがあっただろうと、かなり以前から推測していた。しかしようやく最近になって、宇宙のモンスターが最後に大量の食事をしたときの実際の「化石痕跡」を見つけたと天文学者は考えている。

 国際研究チームが提案した新たな理論は、マゼラニックストリームに注目する。マゼラニックストリームとは、細長いガス(大半が水素ガス)の帯で、銀河系の2つの伴銀河、大マゼラン雲と小マゼラン雲から伸びているように見える。

 マロニー氏は、200万年前に超大質量ブラックホールから噴出した強力なエネルギービームがマゼラニックストリームにぶつかり、ちょうどオーロラのように、水素ガスをイオン化して輝かせたと考えている。マゼラニックストリームが20年前に発見されて以来、このイオン化現象は天文学者の悩みの種だった。

「これまで誰もこのイオン化をうまく説明できるモデルを構築できなかった」とマロニー氏は話す。

 研究チームは、銀河系外でほのかに輝くこのガスの帯こそが、200万年前の超大質量ブラックホールのエネルギー放出を示す化石痕跡ではないかと推測している。

 もともとのアウトバーストの方向と(エネルギーを受けて輝いたマゼラニックストリームのその後の冷却期間も含めて)エネルギー量を試算してみると、このモデルとよく一致した。

 数年前に、フェルミ・バブルと呼ばれる2つの巨大な高温ガスの泡が銀河面の上方と下方に膨らんでいる様子が、ガンマ線と電波により捉えられたが、これも遠い過去にエネルギーの巨大な噴出があった証拠となる。フェルミ・バブルは、超大質量ブラックホールから吐き出されたと考えられている。

◆次のアウトバーストも遠くない?

 問題は、次の噴出があるかどうかではなく、いつあるかだと科学者は指摘する。

 赤外線観測衛星やX線観測衛星は、すでに銀河系の中心部をのぞき込めるようになっており、ブラックホール近傍領域からの放射を観測している。この放射は、ブラックホールが周囲を回る小さなガス雲をばらばらにし、そのガスが降着してブラックホールに衝突するときに発生するものだ。

 今日、天文学者は、超大質量ブラックホールの周囲にはいくつものガス雲が回っていて、それが将来のアウトバーストのきっかけになる可能性があると考えている。実際、アウトバーストはすぐそこに迫っているかもしれないというのだ。

 論文の共著者で、ケンブリッジ大学の天文学者であるグレッグ・マドセン(Greg Madsen)氏は、「これらの衛星が観測しているある1つの雲は、1年以内にブラックホールに降着すると予測されている。しかし、その量は、マゼラニックストリームを輝かせる出来事には遠く及ばない程度だ」と話す。

「非常にかすかな出来事で、地球にはなんの危険も及ぼさない。しかし、いくつかの強力な望遠鏡は、何が起きるかを観測する準備を整えるはずだ」。

 この研究論文は、「Astrophysical Journal」誌に受理されている。

Illustration courtesy Dana Berry, SkyWorks Digital/NASA

文=Andrew Fazekas

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