ケプラー新課題、ブラックホール探査も

2013.09.12
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NASA/ESAのハッブル宇宙望遠鏡がとらえた興味深い銀河。「重力レンズ効果」により、馬蹄形状に見える。明るい赤色銀河(LRG)の1種で、天の川銀河の約10倍という異常な質量を持つ。

Image courtesy ESA/NASA
 2009年に打ち上げられたNASAの宇宙望遠鏡ケプラーは、太陽系外惑星の探査に利用されていた。ところが今年5月、技術的な問題が発生し、ミッション遂行が不可能になってしまった。しかし、遠方の恒星の光が重力によって歪められる現象を観測すれば、系外惑星の発見に再利用できるという。 イギリス、セント・アンドリューズ大学の天文学者キース・ホーン(Keith Horne)氏は、「本来の目的と全く異なる利用法だ」と説明。ホーン氏らは新たに発表した論文の中で、ケプラーの新たな任務を提案している。

 ホーン氏とオハイオ州立大学のアンディー・グールド(Andy Gould)氏によれば、重力マイクロレンズという現象を利用して低温、高質量の惑星を探査できるという。ケプラーはこれまで、木星型の系外惑星“ホット・ジュピター”をいくつも発見している。

 さらに、この手法を用いれば、専門家も驚くようなブラックホールを中心とする惑星系の実在を裏付けられるかもしれない。

「まれな惑星系で、発見するには相当な運が必要だ。それでも、ケプラーならできる」とホーン氏は期待している。

◆ケプラーの苦難

 ケプラーの主ミッションは系外惑星の探査。惑星が恒星の前を“横断”する際に発生する、恒星の明るさの周期的な変動を調べていた(トランジット法)。

 打ち上げから4年間で、134の系外惑星と3000以上の候補を発見し、大きな成果を上げている。

 極めて高い精度が求められるトランジット法のため、ケプラーはジャイロスコープに似た4つのリアクションホイールを装備している。地球の後を追いかけながら、はくちょう座とこと座の方向を向くように制御されていた。

 ところが、昨年7月と今年5月、2つのリアクションホイールの機能が相次いで喪失。8月、NASAはリアクションホイールの修復を断念し、ケプラーの当初のミッションを終了すると発表。同時に、“2輪”でも可能な観測のアイデアを募集し始めた。

 その1つがグールド氏とホーン氏のアイデアだ。ケプラーの機器を利用し、未知の世界の探索を新たな手法で提案している。

 それによると、明るさの変動の代わりに、“重力マイクロレンズ効果”を探す。恒星の光が惑星の重力によってかすかに歪む現象だ。

◆光の歪み

 重力レンズ効果の仕組みを理解するため、地球から見て一直線上に2つの恒星が並んでいる状況を想像してほしい。

 後方の星の光は、手前の星を通り過ぎるときにその重力によって歪む。

「星の重力場はレンズのような働きをする」とホーン氏は説明する。「手前の星が十分大きければ、光が曲がって後方の星が複数に見える。逆に小さい(マイクロ)レンズの場合は、数週間にわたって後方の星の光を増幅させ明るさに変化が起きる」。

 光の変化の持続時間を計測すれば、手前の星の大まかな質量を算出できる。もしこの星に惑星系が存在して、ジャストの位置に惑星が位置していれば、惑星の重力場も後方の恒星の光を歪ませるはずだ。

「光の増幅ははるかに短い」とホーン氏。「レンズの働きをする恒星が光を増幅させている数週間、惑星も光を増幅させる期間が何日か続く」。

◆先駆的なミッション

 重力マイクロレンズ効果を利用すれば、発見が困難だった惑星も探すことができる。

「ケプラーはもともと恒星から非常に近い惑星、つまり高温の惑星をとても得意にしていた」とホーン氏は語る。「マイクロレンズはむしろ遠くの惑星、つまり低温の惑星が得意だ」。

 低温の惑星は生命が存在できない領域にある。

 さらに、これは余談に近いが、相当な幸運に恵まれれば、ケプラーで別の風変わりな惑星系を見つけることも可能だと、ホーン氏とグールド氏は指摘している。ブラックホールを中心とする惑星系だ。

◆暗い恒星

 実際にその可能性は低いものの、ブラックホールは普通の恒星の特徴と容易に見分けられる。ブラックホールは極めて大質量で、平均的な中クラスでも太陽20個分ほどに相当する。

「恒星の質量は光度曲線からわかる。さらに太陽20個分もあれば、とても明るいため人間の目でも確認できるはず」。

 ケプラーで観測した場合、ブラックホールは巨大だがなぜか暗い恒星に見える。その星系に惑星が存在し適度な距離に位置すれば、後方の恒星の光が歪むため、ケプラーで発見できるというわけだ。

Image courtesy ESA/NASA

文=Ker Than

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