カイロの南約300キロ、ミンヤ県にあるマラウィ国立博物館の展示室。同博物館は1963年の開館から、近くの遺跡で発掘された遺物を展示していた。混乱が続くエジプトで、貴重な文化財を収めた博物館がたびたび略奪者に襲われている。

Photograph by Roger Anis, El Shorouk/AP
 混乱が続くエジプトで、貴重な文化財を収めた博物館がまたもや略奪者に襲われた。メチャクチャに荒らされたマラウィ国立博物館の展示室では、運び出すには大き過ぎたのか、一部の収蔵品が瓦礫とともに取り残されている(8月17日)。 カイロの南約300キロ、ミンヤ県にある同博物館は1963年の開館から、近くの遺跡で発掘された遺物を展示していた。

 アメリカン大学カイロ校でエジプト学の教授を務めるサリマ・イクラム(Salima Ikram)氏は、「どの収蔵品も極めて貴重で、多くは分類すらされていない」と嘆く。「このままだと、古代エジプトの宗教行事や葬儀に関する理解にとてつもなく大きな空白が生じてしまう」。

 2階建ての質素な博物館には、さまざまな遺物が展示されていた。動物のミイラ、宗教的な像、ささげもの、色鮮やかに塗装された木棺、ビーズの首飾り、儀式に使う打楽器シストラム、葬儀用の仮面、お守り、墓から出てきた像、聖なる油を注ぐ石の皿、死者の内臓を納める瓶など、2000年以上にわたって極めて良好な状態を保ってきた品ばかりだ。

 現地の報道によれば、まだ略奪者は特定されていないが、犯行時は大統領の座を追われたムハンマド・モルシ氏の支持者が博物館の庭で座り込みを行っている最中だった。窃盗被害は、展示品1089点のうち推定1050点に及ぶ。

 犯人が立ち去った後には、“地元の不良少年たち”が取って代わり、残されていた遺物を燃やしたり、壊し始めたという。2011年の革命勃発以降エジプトでは、このような考古学的な財産を狙った事件が頻発している。

 30年に及ぶホスニ・ムバラク政権の打倒を目指す抗議行動がカイロのタハリール広場で発生した2011年1月、エジプト考古学博物館に略奪者が侵入。世界最高クラスの考古学コレクションを誇る同博物館から盗まれた50点前後の収蔵品の多くは、いまだ行方がわかっていない。

 各地で続く混乱に乗じて、警備が手薄になった遺跡や遺物の保管場所が狙われている。アブラワシュ(Abu Rawash)やアブシールからエルヒベ(El Hibeh)、ルクソールまで、国内至るところで略奪が横行。

 昔から墓泥棒は儲かる仕事だった。金持ちや権力者の墓は、塗装が乾くころには略奪者が侵入、持てるだけの財産を持ち逃げされた。ツタンカーメンの墓も例外ではない。当時、墓泥棒は同じ墓に2度侵入していたと、専門家たちは考えている。番人に捕まらないよう慌てて、ポケットに詰め込んだ宝飾品を出口に向かう途中でばらまいてしまうためだ。

 今や状況は一変している。経済のグローバル化に伴い、古遺物の売買は世界的なビジネスに組み込まれ、その規模は拡大する一方だ。

 マラウィの略奪品に手を出さないようディーラーやコレクターに警告するため、エジプト学者たちはソーシャルメディアを駆使、情報公開に動いている。先頭に立つのが「Egypt's Heritage Task Force」というフェイスブックのグループだ。ここ数年に博物館を訪れた人から遺物の写真を募っており、その数は23日朝の時点で、900枚近くに達した。

 一方、略奪品の目録を作成したエジプト当局は、アラビア語と英語での公開をユネスコに依頼。破壊された展示室に残る遺物を回収すると同時に、古代エジプトの栄光と、人間の創造性が持つ無限の可能性を証明する貴重な宝を返還するよう略奪者に呼び掛けている。

Photograph by Roger Anis, El Shorouk/AP

文=A.R. Williams