機密漏洩の米兵が望む性別変更とは?

2013.08.23
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機密漏洩で有罪判決を受けたブラッドリー・マニング氏(資料写真)。性別を女性に変更するための治療を希望している。

Photograph by Patrick Semansky, Associated Press
 1952年にデンマークで世界初の性別適合手術を受け、トランスジェンダーの先駆け的存在となったクリスティーン・ジョーゲンセン氏。アメリカに帰国後、タブロイド紙は容赦しなかった。「ブロンクス出身のGI(米軍兵士)、女性になる!」。現在でも眉をひそめる向きもあるが、“自分は間違った性の身体に生まれてきた”と感じている人々について、当時よりも寛容な社会になっている。 告発サイト「ウィキリークス」に機密情報を漏洩した罪で、禁錮35年の判決を受けた米陸軍上等兵ブラッドリー・マニング被告は8月22日、自身が性同一性障害者であることを公表。今後は女性として生涯を送る意向で、「チェルシー」という名前を明かし、できるだけ早急なホルモン療法を希望している。

 軍事被告人として服役するマニング氏にとって、自身の医療的なニーズを満たすのは困難な問題になるだろう。

 性別適合手術は2万ドル(約200万円)以上、継続的なホルモン療法は1カ月あたり200ドル(約2万円)の費用が見込まれる。米軍ではそのような治療を提供しておらず、費用の捻出はマニング氏が直面する課題の1つだ。

 NBCニュースによると、アメリカではこれまで、服役中に性別適合手術を受けた受刑者はいないが、州や連邦レベルの多数の裁判で手術を認める判断が出ているという。

◆性転換の仕組み

 フィラデルフィア・トランスジェンダー手術センター(Philadelphia Center for Transgender Surgery)の外科医シャーマン・ライス(Sherman Leis)氏によると、通常は男性から女性への性別適合手術を受ける前に、ホルモン療法を受けながら1年間女性として過ごす。異性装を行い、女性として生活するうちに、患者は反対の性になって人生を送ることを現実として感じ始めるという。

 多数の性同一性障害者の治療、研究に携わるシアトルの心理療法士アン・ローレンス(Anne Lawrence)氏は、トランスジェンダー者がすべて、反対の性で公然と生きる必要があるわけではないという。「ホルモン療法を受ける前に、“リアル・ライフ・エクスペリエンス”と言う段階を踏む。実際に望みの性で生活体験をしてからでも、治療は遅くない。逆に、一日中女性として過ごす生活には移行できないが、ホルモン療法で安らぎを見出す人もいる」。

 心と身体の性を一致させたい男性には一般に、女性ホルモンのエストロゲンと抗男性ホルモン剤であるテストステロン遮断薬が処方される。テストステロンは女性の体内にも少量存在するが、男性の睾丸で分泌され、筋肉や骨量を増やし、体毛の成長を促す働きがある。

 まず、女性のホットフラッシュ(更年期障害の症状の1つ)に処方される、4~5倍量のエストロゲン(および、女性ホルモンのプロゲステロン)の服用から始める。テストステロンが減少し、エストロゲンとプロゲステロンが増加すると、肌が柔らかく、体毛やひげが薄くなり、勃起回数が減少。胸もやや大きくなる。

「もちろん即効というわけではない。最大の効果が表れるまで12~18カ月かかる」とローレンス氏は話す。

 女性患者は反対に、テストステロンの服用から始める。声が低く、胸が小さくなり、上半身の筋力が向上。陰核が肥大して、性欲も高まるという。

◆最後のステップ

 ホルモン療法に続き、次のステップとして性別適合手術を希望する人が多い。マニング氏のような男性の場合、去勢手術と、女性器の特徴を模倣した形成術を受ける。

 マニング氏の希望を叶えるにはさまざまな困難が予想されるが、彼には有利な面もある。“失うものは何もない”という今の境遇だ。

「刑務所の外の一般社会では、性別適合手術を受けると、家族や友人関係、仕事などを損なう場合もある」とローレンス氏は述べる。

 マニング氏は自ら犯した罪によって、その多くを既に失っているようだ。

Photograph by Patrick Semansky, Associated Press

文=Susan Brink

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