「睾丸狙う」は迷信、実際のパクーは?

2013.08.14
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南米ボリビアで捕獲されたパクー。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic
 南米原産の雑食性の淡水魚、「パクー」が最近、デンマークの沖合で捕獲された。木の実と間違えて男性の睾丸を食いちぎる魚として恐れられている。付近の海域で繁殖しているのではないかという不安感が北欧各国で一気に広がり、遊泳者に海水パンツの紐をしっかり結ぶよう当局が注意を促す事態にまで発展。もっとも専門家によれば、それほど深刻に受け止める必要はなく、遊泳者が実際にパクーと遭遇する可能性はほとんどないという。 また、デンマークの首都コペンハーゲンにある「Blue Planet Aquarium(青い惑星の水族館)」の学芸員ラース・スコウ・オルセン(Lars Skou Olsen)氏は、そもそも男性の局部にパクーがかみつくという話は大げさで、おそらく事実ですらないだろうと言う。

「単なる噂にすぎないと思う。心配する必要はまったくない。パクーを見かけたら、それはむしろ運が良いと言えるだろう」。

 オルセン氏の水族館でもパクーは目玉の1つとなっている。注目を集めるこの魚について、同氏に詳しく話を聞いた。

◆パクーはどのような姿をしているのでしょうか?

 それほど老いていないパクーは、ピラニアに似た姿をしています。今回デンマーク沖で捕獲されたのは若い個体で、腹部は赤く背部は銀色でした。

◆本来はどの地域に生息しているのでしょうか?

 原産は南アメリカです。アマゾン川流域の河川に生息しています。

 デンマーク沖で適応するとは、だれも予想できなかったはずです。何よりも水温が低すぎるからです。しかしほかにも理由があります。そもそもアマゾン川は完全な淡水域で、パクーも淡水魚なんですよ。海で生息するなど完全に想定外です。なぜ北欧の海域で生きていられたのかは謎です。

◆捕獲されたパクーに弱った様子はなかったのですか?

 いえ、いたって元気でした。ただ、もし捕獲があと1カ月ほど遅かったら、さらに低下する海水温に耐えられなかったでしょう。

◆寿命はどの程度でしょうか?

 当水族館には、20年近く生きたパクーが過去に何匹かいます。年齢とともに体もかなりの大きさになり、最後は重さ約20キロにまで成長しました。

◆水族館から逃げ出した個体ではないと聞いています。体が小さすぎるうえ、水族館には魚の逃亡を防ぐフィルタが設置されているというのがその理由ですが、それでは一体どこから来たのでしょうか?

 自宅の水槽で飼っていたパクーを、休日に海に放した人がいるのではないかというのが私の考えです。

◆デンマークではパクーを販売しても違法ではないのですか?

 はい。販売は法律で認められています。デンマークで禁止されている魚は毒がある種類だけです。

◆何をエサにしているのでしょうか?

 パクーは雑食性ですが、主に植物類を好みます。野生環境では水中に落下した木の実も食べます。非常に強力なあごを持っているので、堅い木の実でも難なく噛み砕けるのですね。また魚を食べることもあります。当水族館ではエサとして、植物類だけでなく魚も与えています。

◆ピラニアとパクーは同じ仲間の魚なのでしょうか?

 はい、その通りです。実際、野生の若いパクーたちは捕食者から身を守るため、ピラニアの群れの中に紛れ込みます。鋭い歯で囲まれていれば安全というわけです。ピラニアと同じ体色を持つのはこのためです。成長するとピラニアの群れを離れ、単独で生活するようになります。

◆海に生息するパクーがほかにもいる可能性は?

 あると思います。一般にパクーは8~10匹単位で購入されます。1匹では寂しいだろうということで、一度に何匹かを購入する人が多いのです。複数の個体が海に放たれる可能性も高くなるのではないでしょうか。

◆遊泳者は不安だと思うのですが。

 不安を感じるには及びません。むしろパクーの方が人間を怖がって逃げていくでしょう。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic

文=Ker Than

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