批判が高まる水族館ビジネスの現状

2013.08.08
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コネティカット州、ミスティック水族館のシロイルカ(ベルーガ)。

Photograph by Michael Melford, National Geographic
 アメリカ、ジョージア州のジョージア水族館は昨年、ロシアから18頭のシロイルカ(ベルーガ)の輸入許可を求める申請を米国海洋大気庁(NOAA)へ提出していた。しかし8月6日、審議の末に申請は却下された。ジョージア水族館をはじめとする複数の水族館で展示する予定だったという。 数千億円規模のアメリカ水族館業界にとって、今後の事業運営に影を落とすいわば象徴的な意味合いを帯びた決定と言える。

 7月からは水族館業界の悪質な実態を暴くドキュメンタリー映画『Blackfish』の全米公開も始まっており、今夏はアメリカの水族館業界にとって厳しいシーズンとなりそうだ。映画では、アメリカの世界最大規模の水族館、「シーワールド」の残酷で不誠実な運営手法を告発。飼育するシャチ「ティリクム」(飼育下にあるシャチとしては最大級の個体)がトレーナーを含む3名を襲って死亡させた経緯と、水族館による事件の隠蔽工作も詳しく説明されている。

 こうした動きを歓迎するのが、環境保護や動物愛護運動の活動家だ。彼らは、人間の娯楽のために海洋哺乳類を飼育下に置くことに長く抗議してきた。一部では水族館ビジネスの終末が近いとの見方もあるという。

◆方針転換

 先日のNOAAの申請却下は、今までほとんど調査することもなく右から左へと許可してきた同機関の方針転換を示すものでもある。

 しかし今回の決定は、ジョージア水族館側のすべての主張に異を唱える形となった。仮に申請が通ると、ロシアに生息する特定のシロイルカの個体群から数体がアメリカに輸入されることになる。水族館側は、その個体群への悪影響を否定。輸入対象以外の群れに危険が及ぶ恐れもないと主張したが、NOAAはその保証はないとして却下した。このほかにも、輸入対象のシロイルカのうち5頭は推定1歳半と若く、養育環境から切り離すのは危険だという点も考慮された。

◆水族館の不正行為

 ジョージア水族館が野生シロイルカの輸入を申請したのは20年ぶりとなるが、その背景には、同水族館の飼育数が減少し、新しい個体が必要になっていたという事情がある。

 シロイルカはクジラ目に属する他の海洋哺乳類と同様、飼育下では大幅に寿命が短くなってしまう。しかし水族館業界は数十年にわたり、展示する海洋生物を確保するため、不正手段を講じて海産哺乳動物保護法(Marine Mammal Protection Act)の規制を逃れ続けてきた。保有しているクジラ目の動物の所在地や飼育環境をごまかすために、個体を世界各地でたらい回しにしてきたのである。

 今回輸入対象として捕獲された18頭は、体皮の色つやを出すために黒海近くの水槽に閉じ込められている。NOAAの漁業部門はこうした境遇に細心の注意を払うようになっており、水族館業界の今後の見通しは厳しさを増している。イルカショーなどの水族館ビジネスはいま、官民双方からの反感が高まっていると言えるだろう。

Photograph by Michael Melford, National Geographic

文=Kenneth Brower

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