恐竜絶滅期、淡水種の多くは生き延びた

2013.07.24
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小惑星や彗星が雨のように降り注いだ「後期重爆撃期」と呼ばれる時代の想像図。

Illustration by Dana Berry, National Geographic
 6550万年前に地球に衝突した巨大小惑星は、恐竜を絶滅させたことでよく知られている。だがこのときの衝突は、海洋生物の大量絶滅も引き起こした。しかし不思議なことに、内陸の川や湖に生息していた生物では、絶滅した種が比較的少なかった。 最近、海生生物と淡水生物のこの違いに、ある程度の説明がつけられるとする研究論文が発表された。この研究によると、淡水環境で生息する困難さに対処するよう進化した一部の種の生物学的適応力が、小惑星の衝突後に何カ月も続いた暗く凍えるような環境から生体を守るのに役立ったのではないかという。

 たとえば、淡水に生息する多くの生物は、毎年繰り返される凍結と解凍のサイクルや、低酸素の時期に適応している。そのため、多くの種は泥の中に自ら潜り込んだり卵を埋めたりして、休眠する能力を持っている。このおかげで、衝突による最悪の影響をやりすごせたと考えられる。

◆細かい説明が大切

 この研究結果は、長く一般論でしか語られなかったこの分野に、必要とされてきた具体性をもたらしたと、専門家は評価する。

 カナダ、アルバータ大学の古生物学者アリソン・マレー(Alison Murray)氏は、「この論文は、食物連鎖の崩壊のシナリオを、これまで以上に詳細に展開し、それぞれの生物群を詳しく吟味したうえで、光が不足し、その結果光合成を行う生物が失われた中で、どの生物群が長期的に生き延びることができたのかを判断している」と話す。マレー氏は今回の研究には参加していない。

◆2段階の絶滅

 今回発表された論文の中心的な著者であるコロラド大学の地球物理学者ダグラス・ロバートソン(Douglas Robertson)氏は、以前の研究で、問題の小惑星が現在のメキシコ、チクシュルーブに衝突したとき、全世界が火の海になり、大量の岩石が蒸発して大気圏の上層まで巻き上げられた可能性が高いことを示した。

「放射線と火災により、地下や水中で守られていなかったすべての生物は、恐竜も含め、衝突から数時間以内に死滅したと考えられる」とロバートソン氏は言う。

 続いて、大気中に残った塵と灰が空を覆い、地球は数カ月から数年に及ぶ「衝突の冬」に突入した。太陽光からエネルギーを得ていた植物やその他の生物も、あまり長くは生き延びられなかった。

 このモデルによると、海洋は全体として最初の爆発的な熱と炎から守られていた。しかし、海中の食物連鎖が崩壊すると、生物群全体が死滅していった。海生の巨大爬虫類プレシオサウルスや、殻を持つイカのようなアンモナイトもこのとき絶滅した。

 しかし20年ほど前に、科学者は、淡水の生物の絶滅率が比較的低いことに気づいた。海洋環境では約半分の生物種が絶滅したのに対して、淡水では絶滅率がわずか10~20%程度だった。

 当時、一部の科学者は、淡水の生物が、デトリタスと呼ばれる死んだ有機体の堆積物を食物として生きることに、より慣れていたことを指摘し、この奇妙なパターンを説明した。

 衝突の冬の間、淡水環境では、地上で死んだ動植物から、分解した有機物が継続的に川に流れ込んでいたと考えられる。また、この水の流れにより、淡水の生態系では酸素が十分に保たれていた。

 ロバートソン氏らの研究チームも、デトリタスが食物になったという要素が、淡水生物が衝突後の暗い冬を生き延びる役に立ったという説明に同意する。しかし、淡水の生物に休眠に入る能力があったことと、避難場所が得やすかったことの方が「おそらく重要だった」とロバートソン氏は主張する。

◆検証は困難

 古生物学者の今後の課題は、この論文に概説された仮説がどうすれば検証できるかを考えることだ。

 たとえば、ロバートソン氏の研究チームのモデルでは、海洋の食物連鎖の崩壊は淡水環境よりも速く進んだとされる。

「その点は、このモデルから論理的に導かれる。しかし、それは検証できない」と、ロードアイランド大学の古生物学者デイビッド・ファストフスキー(David Fastovsky)氏は指摘する。検証できない理由の1つは、現在の科学的技法では、化石記録から数カ月ないし数年程度の時間の違いを識別できないからだと、ファストフスキー氏は話す。

 ロバートソン氏も、検証が困難なほかの理由を挙げる。「淡水の生態系の方が生存率が高いという証拠は、すべてモンタナ州のある狭い地域の化石記録から得られたものだ。同様の証拠を世界のほかの場所で見つけることが大切だが、それは難しい」。

 この研究は、「Journal of Geophysical Research-Biogeosciences」の電子版に7月11日付けで掲載された。

Illustration by Dana Berry, National Geographic

文=Ker Than

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