イルカは“名前”を呼ばれたら反応する

2013.07.23
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メキシコ、カリフォルニア湾を泳ぐハンドウイルカ。

Photograph by Ralph Lee Hopkins, National Geographic Stock
 過去の研究から、イルカは個体ごとの「シグネチャーホイッスル」という鳴音で識別していることが示されている。多くの場合、複数の群れが遭遇したときなど、大きな集団の中で使用される。 この鳴音の変調パターンは、それぞれの“名前”を表していると1960年代から考えられてきた。捕獲したイルカは、知っている個体の鳴音に反応することがわかっている。

 そして最近、この説をさらに一歩進めた研究結果が発表された。研究には参加していないが、ナショナル ジオグラフィック協会の助成金を得てイルカの行動を研究するカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のホイットニー・フリードマン(Whitney Friedman)氏によれば、自分の鳴音と同じ音に反応し、「ここにいるよ。誰か呼んだ?」とでも言うように、同じ音を繰り返すという。

 研究論文は、イルカが実際に音を名前として使用する“有力な証拠”だと述べている。 ボートでスコットランド東部の海にこぎ出した研究チームは、野生のイルカの群れに近づいて、1頭のイルカのホイッスルを録音した。仮に“ジョーイ”と名乗ったことにしよう。

 その後、“ジョーイ”と名乗ったイルカに録音を聞かせた。すると、しばらくたってから、まるで「ここにいるよ」とでも言うように同じ音を返してきた。

 このイルカに同じ群れの仲間の音を聞かせると、少し反応した。しかし、違う群れの知らない個体の音には全く反応しなかった。

 この研究結果は、シグネチャーホイッスルは何らかの合図であり、それにイルカたちが反応することを示している。イルカのコミュニケーションの解明にとって“素晴らしい貢献”だと、フリードマン氏は評価している。

◆うわさ話も?

 結び付きの強いコミュニティーで複雑な関係を築いているイルカにとって、アイデンティティーの重要性を証明する結果ともなった。

 例えば、オスのグループ間で争いが勃発、片方のグループのメンバーが行方不明になったとき、個体を名前で呼ぶことが極めて重要になる。ホイッスルで呼べば、その個体を助け出す必要性が皆に伝わると、フリードマン氏は説明する。

 さらに、UCSDでイルカのコミュニケーションを研究するジェレミー・カーノウスキー(Jeremy Karnowski)氏も第三者の立場で、雑音が溢れた海中は視界も悪いので、個体のアイデンティティーを示す音の必要性は大きいと指摘する。

「個体群内での識別信号があれば、メンバーの居場所をいつでも把握できる。また、相手が誰なのかはっきりわかる」。

「私にとっては別の興味もわいてくる」とカーノウスキー氏は話す。イルカは、どのような場合に、そして日常的に鳴き交わしているのだろうか? 仲間同士でうわさ話をしているとすれば、身を乗り出して聞いてみたいものだ。

 今回の研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に7月22日付けで発表された。

Photograph by Ralph Lee Hopkins, National Geographic Stock

文=Christine Dell'Amore

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