スノーデン氏のように“消える”方法

2013.07.01
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消息を絶って逃亡したい人は、痕跡を残さずウクライナなどへ飛ぶといいようだ。

Photograph by Maria Danilova, AP
 エドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏の“世界一周”はハワイに始まり、香港を経て、現在地はモスクワだ。 30歳で、アメリカ国家安全保障局(NSA)の契約企業の元従業員であるスノーデン氏は、アメリカ政府の監視プログラムに関する重大な機密情報を暴露した後、滞在していた香港を現地時間6月23日に離れ、空路モスクワへ向かった。

 ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir V. Putin)大統領は現地時間6月25日、スノーデン氏がモスクワのシェレメチェボ空港の乗り換えエリアにいることを認め、同氏はロシアの法律を何ら犯していないと述べた。プーチン大統領が会見を開く数時間前には、ロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergey Lavrov)外相が、スノーデン氏はまだロシアに入国していない状態だと明かしていた。

 報道によると、スノーデン氏はモスクワからハバナへ向かう6月24日の航空便を予約していたという。しかし、その飛行機に搭乗することはなかった。翌6月25日のモスクワ発ハバナ行きにもスノーデン氏の姿はなかった。

 スノーデン氏は普通の旅行者ではない。しかし、世界を股にかけた彼の逃亡劇を見ていると、こんな疑問がわいてくる。多くの人とつながっていることが当たり前の現代社会において、一切のつながりを絶った人間が、追っ手に見つからずに旅をすることなど可能なのだろうか?

 答えは、おそらくノーだ。

「スノーデン氏には多くの助けがあったからできたことだ」と、「National Geographic Traveler」誌の編集長ノリー・キントス(Norie Quintos)氏は話す。「これが普通の旅行者だったら、かなり難しいだろう」。

 身分を偽ることは重罪になるため、その方法は避けたい。それよりは足取りの追跡を非常に困難にするほうがいいと、『How to Disappear: Erase Your Digital Footprint, Leave False Trails, and Vanish without a Trace(失踪する方法:デジタルの足跡を消し、偽の足取りを残し、跡形もなく姿を消そう)』の著者であるフランク・M・アハーン(Frank M. Ahearn)氏は言う。

 アハーン氏は、みずから失踪した人の行方を追う仕事に20年以上携わっていたが、それよりも失踪したい、跡形もなく姿を消したい人の手助けをするほうがビジネスになるのではないかと考えた。

 とはいえ、実際に失踪するのは簡単ではない。そこでアハーン氏に、スノーデン氏のようなやり方かどうかにかかわらず、行方をくらます最善の方法について尋ねた。

◆私は28歳のライターで、ワシントンD.C.に住んでいます。ここを離れて、新しい生活を始めたいのですが、一番いい方法はなんですか?

 お金はどのくらいありますか?

◆いくらでもあることにしましょう。

 お金が無限にあるのなら、世界は思いのままです。おそらくは言葉の通じない東ヨーロッパ行きを考えるでしょう。しかし、行き先は誰に追われているかによります。メキシコ国境を越える手もあり、そこを越えればまず心配ありません。中央アメリカや南アメリカに行けば、追跡の手が届かない小さな町があります。

◆メキシコや南アメリカは聞いたことがありますが、東ヨーロッパを挙げる理由は?

 クロアチアやウクライナは、われわれの国とはインフラがかなり違うので、人を探し出すのが非常に困難です。例えば電気代などの請求を受けるのに、身分証明や番号といったものが必要ない。それに追っ手がウクライナで人探しをするとなると、どこから手をつけていいかわからないでしょう。

◆では無限に使えるお金がない場合は?

 なるべく追跡されにくい生活を送ることです。ラスベガスへ行って、ウェイターなどの正式な記録に残らない職に就き、プリペイドの携帯電話を使えばいい。女性なら、誰か男性をつかまえて、なんでも彼の名前で手に入れることもできます。あまり楽しい暮らしではないかもしれませんが、不可能ではありません。あるいは人の家を泊まり歩き、街から街へ移動するという手もあります。

◆では、ひっそりと街から街へ流れていれば見つかりませんか?

 たいていの人は、別のことで警察に逮捕されるのです。過去の知り合いに連絡をとる人もいる。われわれが人を探すときは、その人が残していく情報を探すのです。祖母や姉妹に電話をかけた記録など。そうした過去はそっくり捨てなければならない。そして何より重要なことは、生きるためにお金を稼ぐことです。

◆私が使っているソーシャルメディアはどうですか? ツイッターとフェイスブックのアカウントを持っていて、知っている人ほぼ全員と連絡をとるのに使っているのですが。それもやめなければなりませんか?

 ソーシャルメディアのアカウントを削除しても役に立ちません。それより、偽の情報を流すことです。みなさん気づいていないのですが、人を探すときは、その人の自宅のコンピューターから手がかりになりそうな情報を探すものです。ですから、例えばラスベガスに逃げる計画だとしましょう。それなら自分の写真をウィスコンシン州にいるように加工するのです。自宅の電話からウィスコンシンへ職探しの電話をかけ、フェイスブックにウィスコンシンのことばかり投稿するのです。そうやってあなたを探している人の目をくらますのです。たくさんの手がかりを与え、あなたがウィスコンシンにいると思わせるのです。

◆でも、実際にはウィスコンシンにはいない。

 そうです。しかし、架空のウィスコンシン在住者をオンラインに作りだし、彼らをフェイスブック上の友達にすることはできる。そして彼らに、ウィスコンシンであなたとランチをともにした話をさせればいい。そういう友達を何人も作って、あなたがウィスコンシンに暮らしていることを証明させるのです。

◆新しい身元を手に入れる方法はどうでしょう? いくつか書類を手に入れて、全くの別人になるのはだめですか?

 新しい身元を手に入れる方法は使えません。以前は社会保障番号と死亡記録を相互照合しなかったので、なんの問題もなく出生証明書を手に入れられましたが、最近は(社会保障番号も)かなり進化していますからね。

◆つまり、失踪する最善の方法は、単純に嘘をつき、追跡されるような記録の残らない暮らしをするということでしょうか。なるべく他人の注意を引かないようにして?

 そうですね、でもそれは本当に、あなたを追っているのが誰か、そしてあなたがどれだけお金を持っているか次第です。相手が本気で見つけようと思えば、おそらく見つかってしまうでしょう。

Photograph by Maria Danilova, AP

文=Melody Kramer

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