海生哺乳類が長く潜水できる理由

2013.06.17
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ガラパゴス諸島、フロレアナ島沖を泳ぐガラパゴスアシカ(資料)。海生哺乳類は、進化によって水中に長時間とどまることができるようになった。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic
 長時間にわたる潜水能力は、海生哺乳類や水生哺乳類が何百万年もかけて進化させてきた特技だ。水中では心拍数が下がり呼吸も停止、四肢の血液は脳や心臓、筋肉へと送られる。 潜水を最も得意とするゾウアザラシなどの哺乳類にいたっては、約2時間も息を止めることができる。イギリス、イングランドにあるリバプール大学で動物の機能を研究するマイケル・ベレンブリンク(Michael Berenbrink)氏は、「体内に酸素の貯蔵庫があり、水中ではそれを使っている」と説明する。

 しかし、こうした哺乳類の体内で起きていた重要な作用を、研究者たちが見逃していたことがわかった。

 クジラやアシカ、アザラシ、カワウソ、さらにはビーバーやマスクラットなど水中に潜る哺乳類は、酸素と結合するミオグロビンというタンパク質が筋肉中に豊富に含まれている。最新の研究によれば、そのミオグロビンは正電荷を帯びており、人をはじめとするほかの哺乳類より、はるかに多くの量が体内に蓄積されているという。結果的に、より多くの酸素を貯蔵し水中で使うことが可能になるが、研究に参加したベレンブリンク氏によれば、基本的に大量のタンパク質が集中すると密集して塊になり、問題を引き起こす場合があるという。

「重病につながる恐れがある」とベレンブリンク氏は話す。人の場合、糖尿病やアルツハイマー病などの慢性疾患だ。しかし潜水する哺乳類では、実際に人に比べて筋肉中のミオグロビンが10倍も濃縮されていると同氏は説明する。

 研究チームによると、この問題を回避するためにミオグロビンが正電荷を帯びたという。磁石の正極同士のように、反発し合って互いに離れようとするからだ。

 電荷の強さに違いこそあったものの、ベレンブリンク氏らが調べた全哺乳類で同じ状況が確認された。

 アメリカ、テキサス州ガルベストン島にあるテキサス海事大学で、海鳥や海生哺乳類の生理学、行動を研究する生物学者ランドール・デイビス(Randall Davis)氏は、今回の研究結果は収斂進化の好例だとメールでコメントしている。同様の環境に暮らす系統の異なる生物が、共通の課題に対して同じように進化するという現象だ。

 さらに、デイビス氏は第三者の立場で、「ミオグロビンはどこから来たのか。酸欠なしで、水中で長時間過ごす能力にどのように貢献しているのか。今回の研究成果が疑問の解明に役立つはずだ」と評価している。

 ベレンブリンク氏は次の課題として、歴史的に水に潜ってきた人々のミオグロビンを調べ、海生哺乳類と同様の変化が見られるかどうかを確認したいと考えている。「世界には水中に潜って食べ物を得てきた民族がいる。そして、中にはとても長く水中にとどまることができる人たちがいる」。

 今回の研究結果は、6月14日号の「Science」誌で発表された。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic

文=Jane J. Lee

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