チーターの狩猟能力、速度より加速力

2013.06.13
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飼育下にあるこの若いオスのチーターは、100メートル走で7秒19を記録した。最新研究では野生のチーターの走る速度を調べている。

Photograph by Gregory Wilson, National Geographic
 スピードがすべて、ではないようだ。チーターは世界最速の短距離走者と言われるが、本当の狩りの秘訣は、よく知られる時速96.5キロ超の最高速度ではなく、ランボルギーニをしのぐ驚異的な加速力と、並はずれた運動能力にあるという。野生のチーターのバイオメカニクス(生体力学)にハイテクで迫った画期的研究の成果が明らかになった。「単純比較すると、チーターの加速力は(オリンピック選手)ウサイン・ボルト(Usain Bolt)が100メートルの世界記録を出した際のそれを約4倍上回る」と、今回の研究を指揮したロンドン大学王立獣医学カレッジ(Royal Veterinary College)の運動バイオメカニクス教授アラン・ウィルソン(Alan Wilson)氏は述べる。「チーターがさらにすごいのは、既に時速60キロ以上で走っていてもそれだけの加速を行い、そこから同じくらい素早く減速して急ターンし、別の方向へダッシュできるところだ」。

 意外なことに、今回調査したチーターたちはほとんど全速力を出さなかった。記録された最高速度は時速93キロで、野生のチーターが出すとされる時速112.7キロを大きく下回った。「(タンザニアの)セレンゲティのような開けた場所ならもう少しスピードを出したかもしれないが、われわれがボツワナで計測したチーターの追跡走行は、ほとんどが比較的控えめなスピードにとどまった。ところが、加速、減速、および体重比のパワー(体重1キロ当たりの発揮エネルギー)に関しては、これまで陸上生物において計測された最高記録が含まれていた」。

 チーターの運動能力を他と比較してみよう。ウサイン・ボルトが100メートル9秒58の世界記録を出したときの発揮エネルギーは、体重1キロ当たり約25ワット。同じく足の速い動物である競技用の馬とグレイハウンドは、それぞれ30ワットと60ワット。これに対し、今回調査された野生のチーターは体重1キロ当たり120ワットと、桁違いのパワーを発揮した。

 調査ではデータを採取するため、ボツワナのオカバンゴ・デルタに生息する野生のチーター5頭に、GPS、加速度計、ジャイロスコープを搭載した追跡用の首輪を取りつけ、17カ月にわたる綿密な観察を行った。

 狩りとみられる行動が始まるたび、そのチーターの首輪に搭載された機器が作動してデータの採取を開始した。チーターが走り始めると、首輪からチーターのスピード、加速度、および急カーブにおける驚異的な減速のほか、追跡中のすべての方向転換や逆行のデータが送信された。首輪のGPSからマップ上のチーターの進路がわかるため、走行中のスピードや動きの連続的データに加え、毎回チーターが走った正確なルートを知ることができた。

 調査では“狩猟のための走り”が計367回記録された。最新技術を搭載した首輪によって、チーターの素早いターンにおける回転半径、加速時に筋肉が発揮したパワー、方向転換やターン時に体に加わったさまざまな力など、幅広いデータが得られた。

 2014年にはさらに調査のレベルを上げ、航空機と航空カメラ、リモートセンサーを使って、チーターがインパラを狩るときの走りを地形の3次元マップでとらえる計画だという。「次の研究では、チーターが獲物に近寄って走り出す際に、地形をどのように理解し利用しているかを調べたい」とウィルソン氏は述べている。

 今回の研究成果は「Nature」誌の6月13日号に発表された。

Photograph by Gregory Wilson, National Geographic

文=Christine Dell'Amore

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