“最初の鳥”に新たな候補

2013.05.31
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新たに発見されたアウロルニス・シュイ(Aurornis xui)の想像図。ジュラ紀中期~後期の中国に生息した獣脚類で、初期の鳥と考えられている。

Illustration courtesy Masato Hattori
 1世紀半あまりの間、最初の鳥類は先史時代の始祖鳥だと考えられてきた。ジュラ紀に生きたこの象徴的生物は、ドイツの石灰岩採石場から採取された少なくとも11個の標本から、体を羽毛に覆われながらも祖先の恐竜に似た歯、鉤爪、骨のある尾を残していたことがわかっている。 しかし、始祖鳥は本当に初期の鳥類なのか、それとも羽毛を生やした多くの非鳥類型恐竜の仲間にすぎないのか? 古生物学者パスカル・ゴドフロア(Pascal Godefroit)氏らはこのほど、アウロルニス・シュイ(Aurornis xui)という生物が初期の鳥であるとする研究を発表した。最初の鳥はどの生物か、鳥類はどのようにして進化したのかをめぐる議論に、新たな顔が加わったことになる。

 保存状態がよく、羽毛の痕跡がみられるアウロルニスの化石標本は、中国遼寧省にある髫髻山層(Tiaojishan Formation)の約1億6000万年前の岩石から発見された。アウロルニスが生きていた時代は始祖鳥より1000万年前ほど早く、また、複数の島に分かれていた先史時代のヨーロッパに生息した始祖鳥とは地理的にも遠く離れているが、今回の研究によって、この羽毛に覆われた2種の生物は近縁種であり、ともに鳥類進化の最初期に位置することが明らかになった。

「アウロルニスは最初期の鳥類の一種であり、“鳥の系統”の中では始祖鳥より古く、おそらく見た目も始祖鳥より“鳥らしく”ない」と、研究共著者でイタリアのジョバンニ・カッペリーニ地質博物館(Museo Geologico Giovanni Capellini)に所属するアンドレア・カウ(Andrea Cau)氏は話す。

◆鳥類の起源をめぐって

 今回の研究の主張は、同じく「Nature」誌に2年前に発表された別の研究と対立する。始祖鳥や始祖鳥に近い恐竜は、鳥類の祖先ではないと主張する研究だ。

 2011年、古生物学者の徐星(Xing Xu)氏らが、同じような羽毛のある恐竜を同じ地層から発見し、シャオティンギア・ゼンギ(Xiaotingia zhengi)と名づけた。この生物もまた始祖鳥の近縁種とみられた。

 しかし、そこからが今回の研究とは異なる。徐氏らのチームは、始祖鳥とシャオティンギア、およびまた別の類縁種であるアンキオルニス(Anchiornis)は実際には鳥の系統には属さず、それよりは非鳥類型恐竜であるデイノニコサウルス類の系統に近いと主張したのだ。

 デイノニコサウルス類は羽毛を生やし、飛び出しナイフのような鉤爪をもつ恐竜で、ヴェロキラプトル(Velociraptor)やトロオドン(Troodon)などがこれに属する。

 羽毛があるだけでは鳥類の条件を満たさず、また、多くの鳥に似た恐竜が続々と発見されていることが、初期の鳥類と単にそれらしく見えるだけの生物をいかに区別するかという議論に拍車をかけている。

 したがって、始祖鳥も初期の鳥類ではなかった可能性がある。しかも徐氏のチームは、最初の鳥類の祖先はよく言われるデイノニコサウルス類ではなく、出っ張った歯をもつエピデクシプテリクス(Epidexipteryx)に近い、あまり知られていない恐竜から進化したのではないかという説を唱えている。

 いかなる進化の系統樹もあくまで仮説であり、新たな証拠や調査によって変化する可能性がある。したがって、徐氏のチームが描いた系統樹に異論が出たのも不思議なことではない。

 徐氏らの主張に対しては、マイケル・リー(Michael Lee)氏とトレバー・ワーシー(Trevor Worthy)氏が異なる研究手法を用いて素早く反応し、始祖鳥は初期の鳥類であるとの見解を改めて示した。今回のアウロルニスに関する研究もこの説を支持しているが、その始祖鳥よりさらに古い鳥類の候補としてアウロルニスを位置付けている。

◆鳥類の定義

 始祖鳥やアウロルニス、およびその類縁種の問題は、「あまりに原始的なため、鳥類の系統かデイノニコサウルス類の系統か」、あるいは別の系統なのかを確定するすべがないことだと、メリーランド大学の古生物学者トーマス・ホルツ・ジュニア(Thomas Holtz, Jr.)氏は述べる。これらは系統の起源に近い種であるため、厳密な位置を特定することが困難だ。

 ロサンゼルス郡自然史博物館の古生物学者ルイス・チアッペ(Luis Chiappe)氏も同じ意見で、アウロルニスは鳥類の祖先に近いが、実際には、始祖鳥と現生鳥類の最後の共通祖先から定義される鳥類の仲間には属さない可能性があると指摘する。

「近年の問題は、これらの生物がどれも解剖学的に非常によく似ていて、われわれの定義する鳥類、定義といっても恣意的なものだが、その定義によって鳥と鳥でないものが区別されていることだ」。

 さらに、羽毛をもつ化石が多数見つかっていることが問題をいっそう複雑にしている。

「進化の系統樹から、そして新たな化石からわかることは、1億5000万~1億6000万年前のジュラ紀には、多くの異なるタイプの恐竜が“鳥らしさ”を試してみていたということだ」とチアッペ氏は言う。「この“鳥らしさのごった煮”の中から、真の鳥類が出現した」。

 アウロルニス、アンキオルニス、始祖鳥、シャオティンギア、エオシノプテリクス(Eosinopteryx)などの鳥に似た恐竜の分類は厄介な問題である反面、この混乱は古生物学に有益な知見をもたらしてもいる。羽毛をもつ恐竜の発見や調査が相次いだ結果、鳥類が恐竜(の子孫)であることには疑いの余地がなくなっている。

 ホルツ氏は、始祖鳥、アウロルニスおよびその類縁種は今後の研究において「系統樹の始まりに近い位置をうろうろするだろう」と予想するが、「結局どれがデイノニコサウルス類の系統でどれが鳥類の系統であるかは重要ではない。これらはみな、ハトやヴェロキラプトルの祖先が小型でおそらく飛ぶことのできる、このような姿をした生物であったことを教えてくれている」。

 それでも、初期の鳥類の系統樹を明らかにすることは、最初の鳥類がどのようにして進化したのか、とりわけどのように飛翔能力を獲得したのかを推測する上で重要だ。どの生物が“最初の鳥”と呼ぶにふさわしいのか、それを特定することが進化上の最も偉大な能力の1つに関するわれわれの理解にどう影響するのかということは、今後も長い年月をかけて研究され、議論されていくことだろう。

 今回の研究は5月29日付で「Nature」誌オンライン版に発表された。

Illustration courtesy Masato Hattori

文=Brian Switek

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