エベレストの氷河縮小、登山家も証言

2013.05.17
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ネパール北東部のクーンブ(Khumbu)氷河。氷が溶けて水が溜まっている。

Photograph by Alex Treadway, National Geographic
 世界最高峰のエベレストは、1963年にジム・ホイッテイカー(Jim Whittaker)がアメリカ人として初登頂に成功した当時と様変わりしたようだ。新たな研究によると、過去50年間続く雪氷の減少は、地球温暖化の影響もあるという。 エベレスト、ローツェなどヒマラヤの高峰を擁すサガルマータ国立公園付近では、氷河が13%縮小している。気象データによると1990年代前半以降、気温が上昇し、降雪が減っているという。イタリア、ミラノ大学の博士論文提出資格者スディープ・タクリ(Sudeep Thakuri)氏は5月13日、メキシコのカンクンで開催されたアメリカ地球物理学連合のアメリカ総会で今回の研究を発表した(論文は今後掲載の予定)。

「国立公園の雪線(万年雪の境界)は、斜面を180メートルほど上昇した」とタクリ氏は言う。

 同氏のチームでは、要因として温室効果ガスによる地球温暖化を挙げているが、今回のデータで両者の関連が確実に裏付けられたわけではないという。

 氷河の消失は景観の変化だけでなく、さらに広範で深刻な問題も生じる。

 チベット高原を囲む山脈は、長江、黄河、メコン、ガンジスなどアジアの大河の水源地域だ。地球人口のほぼ3分の1に相当する、約20億人の生活に欠かせない水を供給している。「水源の信頼性が低下すると、下流地域に与える影響は極めて深刻だ」とタクリ氏は懸念する。

◆登山家には周知の事実

「我々も薄々感じていた」と話すのは、経験豊富な世界的登山家の1人で、エベレスト遠征に数多く参加しているコンラッド・アンカー(Conrad Anker)氏だ。

 同氏が初めてアタックした時(1999年)から、エベレストの雪線は大幅に上昇したという。2012年、アメリカ遠征隊50周年を記念するパーティに参加し、西稜ルートに挑戦した当時を語ってくれた。

「状況はかなり厳しかった。雪が溶けたばかりのようで、ホーンバイン・クーロワール(Hornbein Couloir)は硬い氷が剥き出しになっていた。写真を見ただけでは明言できないが、1963年には雪の斜面を踏み鳴らして登っていたようだ」。

「過去8年間、ヒマラヤ中央部は特に乾燥している。気温上昇か少ない降雪、またその両方が続いたのか判然としないが、氷が溶け続けていることは確かだ」。

◆大規模な融解

 ネパールのカトマンズの渓谷に住むタクリ氏によると、小規模な氷河の縮小スピードは目を見張る早さだという。

 1平方キロ以下の氷河は、1960年代以降に表面積が43%縮小し、その境界は斜面を400メートル上昇した。

 数十年以上にわたる様子を追跡するため、タクリ氏のチームは衛星画像と地形図を詳しく調べて、氷河の履歴を作成し、斜面上昇を統計的に分析した。

 対象は、1148平方キロのサガルマータ国立公園を含む広範な地域。ネパール気候観測所とネパール水文気象局(DHM)のデータから、気温と降水量のパターンをグラフ化した。

 その結果によると1992年以降、冬季とモンスーン前の数カ月間、地域の気温は摂氏0.6度上昇し、降水量は100ミリ減少したという。

Photograph by Alex Treadway, National Geographic

文=Brian Handwerk

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