化石細菌ガンフリンティア(Gunflintia)の3次元再構築画像。

Image courtesy David Wacey
 初期の地球には独特な匂いが漂っていた。カナダ、スペリオル湖周辺の岩石から採取された約19億年前の化石を高度な画像化技術を用いて調べた結果、それはあまりいい匂いではなかったことが判明した。 研究の結果、ガンフリンティア(Gunflintia)という細菌の円筒形の外殻は、それより小型の球状および棒状細菌の餌になっていたことが明らかになった。ガンフリンティアの外殻を消化するのに、細菌は海水中の塩(硫酸塩)から酸素原子をとって用いる必要があった。その過程で気体の二酸化炭素が生成され、大気中に放出されていたとみられる。

 この生化学過程で生じるもう1つの副産物が硫化水素で、これは「腐った卵のような臭い」として知られる悪臭を放つと、ロンドンにあるオックスフォード大学の純古生物学者マーティン・ブレイジャー(Martin Brasier)氏は述べる。「地球全体が腐卵臭に満ちていたわけではないが、嗅覚の鋭い人なら、かなり広範囲で感じられたはずだ」。

 早くも35億年前から生物が別の生物を食べていたことは化学的には証明されているが、今回作成された画像は、従属栄養と呼ばれるこの種の栄養摂取の証拠を初めて視覚的にとらえたものだ。

「生物が別の生物を食べているところを初期の化石記録において初めて発見した」と、研究の共著者であるブレイジャー氏は述べる。「それが岩石中で起こっているのを顕微鏡の下で、われわれの目でとらえることに成功したのは今回が初めてだ」。

 ガンフリンティアは藍藻(シアノバクテリア)の一種と考えられている。光合成微生物である藍藻は、初期地球の大気を酸素で満たし、それによって複雑な生命が誕生する素地を作るのに重要な役割を果たした。「われわれが今呼吸している酸素を作りだしていたのがこの種の微生物だ」とブレイジャー氏は言う。

◆微生物が微生物を食べる

 ブレイジャー氏と西オーストラリア大学のデイビッド・ウェイシー(David Wacey)氏らのチームは、高度な画像化技術と化学分析技術を組み合わせ、微化石の詳細な3次元画像を作成した。

 ガンフリント生物群は、今から60年前の1953年にガンフリントチャートという岩石から初めて発見された。これら微生物の化石は、チャールズ・ダーウィンの時代にさかのぼる謎、「ダーウィンのジレンマ」として知られる謎を解く手がかりとなった。

 ダーウィンの進化論では、地球生命の起源は数十億年前にまでさかのぼると予測されたが、当時知られていた最古の化石はわずか5億4200万年前のカンブリア紀のものだった。

 この状況を一変させたのが、ガンフリント化石群の発見だ。「この発見によって生命の起源は5~6億年前から20億年近く前にまでさかのぼった」と、カリフォルニア州パサデナにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の地球化学者ケネス・ウィリフォード(Kenneth Williford)氏は述べる。同氏は今回の研究には参加していない。

 今回の研究は、約60年前に発見されたガンフリント化石群にまだ驚くべき事実が眠っていることを明らかにした。作成されたガンフリント生物群の3次元画像から、ガンフリンティア細菌を一部のより小さな微生物が好んで食べており、別の細菌種であるヒューロニオスポラ(Huroniospora)は食べていなかったことが判明した。

 ガンフリンティアが食べられていた証拠はほかにも見つかった。ガンフリンティアの外殻には無数の穴があき、ところどころ黄鉄鉱によって部分的に、あるいは完全に満たされていたのだ。“愚者の黄金”とも呼ばれるこの硫化鉄鉱物は、研究チームがガンフリンティアを食べていたと考えている従属栄養の硫酸塩還元細菌が老廃物として生成する。

 この細菌が食べ物を選り好みしていた理由について、ブレイジャー氏はガンフリンティアのほうが単純に食べやすかったからではないかと考えている。「ヒューロニオスポラは異なる物質、蝋のような物質でできていたのではないかという気がしている」。

 その違いは、例えるなら「ニンジンと木片」を食べる違いに似ていただろうとブレイジャー氏は言う。ヒューロニオスポラは「硬くて分解しにくかったはずだ」。

 今回の研究は、4月29日付で「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に発表された。

Image courtesy David Wacey

文=Ker Than