土星北極の巨大嵐、カッシーニが観測

2013.05.02
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土星北極に生じた大規模嵐の高解像度画像(着色合成)。NASAの土星探査機カッシーニが撮影。

Image courtesy Caltech/NASA
 土星の北極付近に発生した“モンスター級”の嵐が、NASAの土星探査機カッシーニによってとらえられた。地球に発生する同様の嵐についての理解を深めるのに役立つと期待されている。「この巨大嵐は形態的に地球のハリケーンや台風と似通っていて、中心に目があり、その周囲を雲が渦巻いている。ただ、この土星嵐は途方もなく大きい」と、カッシーニ画像チームの一員で、バージニア州にあるハンプトン大学のクニオ・サヤナギ(Kunio Sayanagi)氏は話す。

 嵐の目だけで直径2000キロと推定され、地球で生じるハリケーンの目の20倍以上ある。

 いつ発生したのかは不明だが、この嵐は土星の気象の恒常的な特徴である可能性が考えられると、同じくカッシーニ画像チームの科学者で、カリフォルニア州パサデナにあるカリフォルニア工科大学のアンドリュー・インガーソル(Andrew Ingersoll)氏は述べる。

 カッシーニが2004年に土星に到着したとき、土星の北半球はちょうど冬にあたり、北極は太陽から遠くへ傾いて闇の中にあった。しかし、探査機の赤外線カメラ2台が暗視ゴーグルのように極地の夜を見通し、この大規模嵐の存在を示す兆候を初めてとらえた。

 嵐の目は実際に雲の間にあいた穴であるため、土星大気のより深く、高温の層までもがとらえられ、明らかな熱放射としてカメラに写ったとサヤナギ氏は言う。「これらのカメラは解像度があまり高くないが、既に以前、極地に(赤外線観測による)ホットスポットを見出しており、興味深いと思っていた」。

 2009年には土星北半球に春が訪れたが、2012年11月まで光学カメラで嵐を撮影するのに適した軌道にカッシーニを乗せることができなかった。

◆最新の姿

 新たに公開された一連の目を見張るような写真は、土星の昼に光学カメラを使って撮影された。可視光の下で嵐の美しさと入り組んだ構造があらわになっている。

 新たな画像は、土星の嵐のみならず、地球に発生する同様の嵐の内部構造を解明するヒントにもなると、カッシーニの科学者チームは期待している。

 地球のハリケーンは暖かい熱帯の海から蒸発した水を取り込む。しかし、土星には海がないため、土星大気がどのようにして嵐を形成するのかは謎だ。

 また、嵐が土星の北極から動かないことも謎だ。地球のハリケーンは、地球の回転によって力が加わるため、熱帯の赤道付近で生まれた後、北方へ移動していく傾向にある。

 一方、土星嵐の着色画像では、目の壁に沿って薄い雲が時速540キロで回転しているのが見える。壁の近くでは、さらに強い風が吹いている可能性がある。

◆嵐の謎に迫る

 ハリケーンに似た嵐は太陽系の他の巨大ガス惑星にもみられる。しかし、太陽系の中心から離れるほど風速が強くなることに、研究者は頭を悩ませているとカリフォルニア工科大学のインガーソル氏は述べる。

 感覚的には逆が正しいように思えるが、中心から遠い惑星は地球に比べて大気が安定していることと関係があるのかもしれないとインガーソル氏は説明する。水蒸気が存在すること、そして大気の乱れが少ないことが、強力な嵐を生む条件だ。

 他の巨大ガス惑星と同様に、「土星は厚い水素の大気をもち、水蒸気をほとんど含まないが、それでもなぜか強い風を生み出している」とインガーソル氏は言う。

 土星はハリケーン研究のユニークな実験室になるとカッシーニ・チームは考えており、そのような強い風を起こすうえで水が果たす役割を解明するのに役立つと期待している。

「地球は複雑で厄介だ。地球のハリケーンは変化する海洋温度と相互作用し、海岸線にぶつかり、ジェット気流に押しのけられるため、それらの要素がハリケーンを動かしている基本原則の解明を非常に難しくしている」とサヤナギ氏は説明する。

 これに対し、今回新たに撮影された土星の嵐は陸地と海の境界にぶつかることもなく、極地から動かないため、嵐を支配する物理学的要素にのみ焦点を当てて調べることができる。

「これは嵐のメカニズムを従来の限界を超えて解明するのにうってつけの環境だ。何より好都合なのは、激しい嵐を研究するのに身の危険を心配しなくていいことだ」とサヤナギ氏は述べている。

Image courtesy Caltech/NASA

文=Andrew Fazekas

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