鳥の脚が曲がっているのは恐竜時代から

2013.05.01
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現生鳥類の進化の系統を示したイラスト。膝を大きく曲げた立ち姿は、前肢が大型化し翼となるのに伴って生じたものであるという。

Illustration courtesy Luis Rey
 鳥の脚は奇妙な形に折れ曲がっているが、この進化的適応は1億年以上前、祖先に当たる恐竜の段階で始まったものであることが、最新の研究で示された。意外なことに、この変化は空を飛ぶ能力を獲得するより前に起こったものだという。 今回の研究は、さまざまな化石にデジタルで“肉付け”することで、二足歩行の恐竜が今日の鳥類に進化するまでの数億年の間に起きた肉体的変化を示したもの。これによって、鳥の脚が曲がった状態になったのは、前肢の大型化に伴って起きた変化であることが指摘された。この前肢の大型化が、やがて空を飛ぶ能力の獲得につながっていく。

 鳥類と人類はともに二足歩行だが、脚の形は驚くほど違う。ヒトの脚は基本的に真っすぐで、脚部の骨が全体重を支えられるようになっている。これに対し、鳥の脚は大きく折れ曲がっており、立っているときの筋肉への負担が大きい。

「長い骨が1本の柱(のよう)に真っすぐ続いているほうが、体重を支えるのには効率が良い」と、論文の共著者であるロンドン大学王立獣医学カレッジ(Royal Veterinary College)のビビアン・アレン(Vivian Allen)氏は言う。

「膝を曲げた状態だと、重力に耐えるためには筋肉の負担が大きくなる。力学的原理から見ると、(このような進化は)少し奇妙な感じがする」。

◆驚くべき結果

 この奇妙な立ち姿の起源を明らかにするため、アレン氏らのチームは化石を元に17種の主竜類の3D骨格を作成した。主竜類とは、恐竜と、現生動物では鳥類とワニの属する分類群だ。チームはその後、筋肉の詳細な復元モデルや、現生の近縁種のCTスキャン画像などからの推測を元に、この骨格にデジタルで肉付けを行い、絶滅した動物たちの姿を再現した。

 こうして、2億4500万年前のワニのような四足獣から、翼と羽毛を初めて獲得した1億5000万年前の始祖鳥を経て、セキショクヤケイ(学名:Gallus gallus)などの現生鳥類に至るまでの生体力学的変化の追跡が可能になった。

 ティラノサウルス・レックス(T・レックス)などの恐竜は太く長い尻尾を備えていたが、時代が進むにつれ、より細く短い尻尾の動物が優勢になっていく。この顕著な身体的変化は早くから指摘されており、現生鳥類の立ち姿もその影響によるものと広く考えられてきたが、今回の研究はそれに異を唱える。

「恐竜の重心位置と姿勢の大きな変化の原因は尻尾(の形状の変化)であるという仮説については、これまで疑ったこともなかった」と、研究共著者のジョン・ハチソン(John Hutchinson)氏は文書でコメントしている。ハチソン氏は王立獣医学カレッジの研究者で、生物進化の生体力学的研究を専門としている。

「恐竜の体を見て真っ先に目につくのが尻尾の変化だ。しかしデータの分析を繰り返すうちに、重心位置と姿勢に対する前肢の影響は、これまでまったく検討されてこなかったことに気づいた。そして前肢こそが、尻尾など体のどの部分よりも大きな影響を及ぼしていたことが分かった」とハチソン氏は書いている。

 前肢の大型化は、膝を曲げた立ち姿につながった。そして前肢の大型化によって、やがてミクロラプトルや始祖鳥などの翼を備えた恐竜が登場し、飛翔能力を獲得するに至った。

「私たちの気づいた点は、前肢が大型化すると後肢の働きにも変化が生じるということだ」とアレン氏は説明する。恐竜の四肢の質量の増加と重心位置の相関を示す統計データは十分にあるが、尻尾の質量の減少と重心位置の相関を示すデータは存在しないともアレン氏は言う。

 この進化的適応の経緯を想像するには、二足歩行動物の足の位置は重心位置と密接に関係していることを思い出してほしいとアレン氏は言う。

 前肢が大型化し翼へと進化したことで、重心は前に移動した。そして重心位置が前になると、足も前に出さなくてはいけないとアレン氏は言う。「その結果、(後)肢を関節のところで曲げて、しゃがんだ姿勢をとる必要が生じた。ダチョウやエミューの大腿部はほとんど水平で、きわめて短い」。

◆飛翔能力獲得への道のり

 ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立自然史博物館の古生物学者ハンス・ディーター・スーズ(Hans-Dieter Sues)氏は、今回の研究に参加していないが、その分析に非常に興味を持ったと語る。

 スーズ氏が特に高く評価する点は、立ち姿の変化を、初期の鳥類とその仲間の恐竜の進化の歴史の文脈の中で捉えていることだ。前肢の大型化は恐竜が飛翔能力を獲得するよりもずっと前に起こっている。ということは、この変化は元々、別のニーズによって生じたものであるはずだ。

 現生鳥類の祖先に当たるグループにおいて、「前肢の長さはおそらく、獲物を捕えたり処理したりする目的で変化した」。長くなった前肢がさらに発達して現生鳥類の翼になったのは間違いないとスーズ氏は言う。その一方で「尻尾は小型化した。ほかにも、飛翔に適応する形で骨格が発達していった」。

 恐竜の一部が飛翔能力を獲得した経緯を今後さらに明らかにするには、滑空または羽ばたき飛行の能力を獲得した初期の動物において揚力の中心がどのように進化したかを研究するというアプローチが考えられるとアレン氏は言う。「それはかなり困難だ。これらの動物の形状と大きさを正確に把握する必要がある。それでも標本は十分にあるので、挑戦はできるのではないか」とアレン氏は語った。

 今回の研究は、「Nature」誌のオンライン版に4月24日付で掲載された。

Illustration courtesy Luis Rey

文=Brian Handwerk

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