大型個体を捕り尽くす狩猟で生態系危機

2009.01.12
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2009年1月に発表された研究によると、“戦利品”として最大サイズの獲物を狙う狩猟行為は、動植物の個体群に悪影響を及ぼしている。その速度は自然淘汰や人間による別の影響に比べても急激なものだという。

 写真は、アメリカのモンタナ州にあるグレイシャー国立公園で撮影されたオオツノヒツジ。この動物も“戦利品”として狙われることがある。そのような影響を受けた動植物では、まだ小さな個体が繁殖に及ぶ機会が必要以上に増えるという。

Photograph by David Alan Harvey
 人間の狩猟採集行為が生物の進化を早めているという新たな研究が発表された。狩りの対象となる動物などではしだいに小型で若い個体が増加する傾向があるという。 狩猟をするハンターたちは“戦利品”として最大サイズの獲物を手に入れようとする。この行為が、汚染や生息域の破壊といった人間によるそのほかの影響や自然淘汰に比べて、急激な悪影響を動植物に及ぼしていた。そのような影響を受けた動植物では、まだ小さな個体が繁殖に及ぶ機会が必要以上に増えるという。

 研究を率いたカリフォルニア大学サンタクルーズ校の進化生物学者クリス・ダリモン氏は、「人間の行為が進化を強制的に促進していることは以前から知られていた」と語るが、今回の研究では動植物の集団全体に見られる急速な変化が警告された。

 同氏によると、「人間が狩猟や採集の対象とする動植物は、自然界で最も速いレベルで変化している」という。同氏らの研究チームは、これまでに記録されている狩猟による変化を40地域、29種にわたって調査した。商業漁業の対象となる魚をはじめ、カサガイや巻き貝などの海洋生物、オオツノヒツジやカリブー(トナカイ)、そして2種類の植物が調査の対象とされた。

 このような生物の変化について研究チームは、“自然界にある”圧力、すなわち天候や食物をめぐる競争、人間以外の捕食動物といった脅威のみに直面している別の20種と比較を行った。さらに、狩猟の対象ではないものの、人間による別の淘汰圧の影響を受けている25種も比較の対象として研究が進められた。

 その結果、動物の体のサイズと繁殖のパターンに大きな違いがあることが明らかになった。

 同氏によると、「狩猟や採集の対象である生物は、自然のままの生物に比べて進化の度合いが3倍も速かった」という。体の小型化や若いうちに繁殖する度合いは、汚染や生息域の破壊といった人間による別の影響のみの場合と比較すると、狩猟採集の対象となる場合に1.5倍も速まっていた。

 この研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌の今週号に掲載されている。

 人間の狩猟の結果、例えばオオツノヒツジの体やツノのサイズは、この30年で2割も小さくなっている。カナダの東海岸に生息するタイセイヨウダラの場合、わずか20年の間に繁殖年齢が6歳から5歳へ低下していた。

 同氏によると「商業として、ゲームとしての狩猟は、単に小さな魚やツノの短いヒツジを増やすだけにとどまらず、動物や植物の個体数の回復能力も妨げている」という。人間の狩猟頻度は、概してオオカミやサメといった自然界の捕食動物による狩猟頻度よりも高い。

「特に魚の場合、若く小型な個体が繁殖すると子孫の数が減り、結果としてそれをエサにする捕食動物の個体数も減少する。こうした変化は当の魚に限らず、周囲にいる捕食動物、エサ、競争相手の進化にも悪影響を及ぼしかねない。これほど速く種の小型化が進めば、生態系の機能にも影響する恐れがある」と同氏は懸念している。

 ロンドン自然史博物館のフィリップ・フェンベルク氏は、この研究について次のようにコメントする。「このような傾向が、小型で若い個体の繁殖による短期的な影響なのか、長期的で本質的な遺伝子レベルの変化なのかははっきりしない。だが、いずれにせよ解決法は同じで、最大級の戦利品を狙った狩猟を削減するしかない」。

 研究を行ったダリモン氏もこれと同意見で、「狩猟の対象となる動物を健全なサイズに保つには、自然界の捕食動物を見習うのが一番だ。つまり、捕獲する量を大幅に減らして最大サイズの個体を残すことだ」と述べている。

Photograph by David Alan Harvey

文=Anne Minard

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