木の“悲鳴”、聞き分けに成功

2013.04.16
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干ばつに見舞われたアメリカ、アイダホ州サーモン・チャリス国有林(Salmon-Challis National Forest)に立つ1本の木(撮影時期不明)。

Photograph by Pete Ryan, National Geographic
 干ばつで傷んだ木は、固有の音を出すという。その悲鳴を聞き取り、助けるための手掛かりが見つかった。 フランスの研究チームによる実験で、乾燥ストレスを受けた木の内部で発生する泡から超音波をとらえることに成功した。これまでは、さまざまな音に埋もれて、最も憂慮すべきシグナルの検出が困難だった。

 研究チームを率いたフランス、グルノーブル大学の物理学者アレクサンドル・ポノマレンコ(Alexandre Ponomarenko)氏は、「音の発生源を区別する見通しがついた」と話す。

 いずれ、枯れかけた木に急いで給水するタイミングがわかるようになるかもしれないと、ポノマレンコ氏は言い添えている。同氏はメリーランド州ボルチモアで3月に開催された、アメリカ物理学会(APS)の会合で研究成果を発表した。

◆木の音を聞く

 ポノマレンコ氏のチームは、まずどのように水を取り込んでいるかを考えてみた。木の内部には、とても長い“ストロー”が通っている。それは、木部の導管と呼ぶ特殊な管の束で、水分子の引力、水と植物細胞の引力を利用し、液体を最上部の枝葉まで届ける役目を担っている。背が高い樹木は、導管内の液体に気圧などの圧力が強く働く。しかし、隣同士の水分子が引き合うおかげで導管は強度が保たれる。

 グラスの底の残り少ない液体をストローで吸い上げる場面を想像してみてほしい。満杯時より強く吸う必要があるはずだ。干ばつで水分が不足すると負圧が上昇、導管部が破壊されて水に溶けていた空気が木部で発泡し(キャビテーション)、水の流れを妨げてしまう。

 木はある程度までは耐えられるが、限度を超えると命取りになりかねない。科学者や森林の管理者は、キャビテーションの大量発生を把握したいと考えている。

 キャビテーションによって発生する音をマイクで拾うアイデアは数十年前からあった。ただし、内部をのぞくことができないので、音の発生源の特定には至っていなかった。木がきしむ音や壊れる音かもしれないし、木部細胞が崩壊する音かもしれない。

 この問題の答えを探るため、ポノマレンコ氏のチームは1つの実験を行った。まず、薄くスライスした松の木を液体で満たされたジェルカプセルに入れ、生木の内部と同じ条件を作る。

 次に、カプセル内の水を蒸発させ干ばつを再現。松の木がキャビテーションを始めると、泡が形成される様子を撮影し、同時にマイクで録音した。

 マイクが拾った超音波の約半分がキャビテーション関連で、残りは泡が近くの細胞に侵入する音などだった。最大の成果は、現象ごとの音のパターンを把握できたことだという。

 ポノマレンコ氏らはこれらのパターンを実際の生木の音と比較すれば、発生源の現象を特定できると考えている。

◆渇いた木を救え

 ポノマレンコ氏によれば、今回の研究成果は、乾燥ストレスをマイクで診断できる携帯端末につながる可能性があるという。

 干ばつの頻発・深刻化が予測される将来、そうした端末の重要性が増すかもしれない。さまざまな地球温暖化のモデルが、その予測を裏付けている。

 事実、2012年秋に「Nature」誌で発表されたある研究によれば、南アメリカの熱帯雨林からアメリカ西部の乾いた森林地帯まで、あらゆる場所の樹木が既に“危機に瀕している”という。つまり、キャビテーションの発生率が限界に近づいているのだ。

 今後は、渇きの音をリアルタイムで観測する装置を樹木に取り付けて、必要なタイミングで自動給水するなど、早期対応の態勢を整える必要があるとポノマレンコ氏は指摘している。

Photograph by Pete Ryan, National Geographic

文=Gabe Popkin

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