アポロのエンジン、海底から回収される

2013.03.25
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フロリダ州ケープカナベラル沖の海底で見つかったサターンVロケットのF-1エンジン、推力室の一部。

Image courtesy Bezos Expeditions
 アマゾン・ドット・コム社の創設者ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏は米国時間3月20日、ベゾス氏と同氏が資金を提供するベゾス・エクスペディションズ(Bezos Expeditions)のチームが、かつてアポロ計画の宇宙飛行士を月へ送ったエンジンの回収に成功したと発表した。 チームは遠隔操作無人探査機(ROV)を使ってF-1ロケットエンジンの部品の残骸(写真は推力室)に吊り索を巻きつけ、エンジン2基の大部分を復元するのに十分な部品を回収した。

 これらの残骸は水深約4.8キロの海底から引き揚げられた。声明の中でベゾス氏はNASAに謝意を表し、「あなた方のF-1エンジン2基を持ち帰れることを嬉しく思う」と述べている。

 F-1エンジンはサターンVロケットを構成する最もパワフルな部分だ。サターンVは1960年代に重いペイロードを運ぶ月ミッションのために開発された大重量物打ち上げロケット(HLLV)だ。サターンVは歴史的なアポロ計画に使用されたロケットであり、これまで無事に飛行した中では今なお最も強力なロケットとされる。最後に使用されたのは1973年、スカイラブ宇宙ステーションを地球軌道に打ち上げたときだ。

 サターンVロケットは、5基のF-1エンジンは燃料がなくなるまで燃焼したのちロケットから分離して海に落下するよう設計されていた。「このハードウェアに自らの真実を語らせたい」とベゾス氏は述べている。「時速8000キロで(大気圏に)再突入し、海面に衝突したときのことなどを」。

 2012年、深海ソナーによってフロリダ州ケープカナベラル沖で初めてF-1エンジンが見つかったとき、これらは人類が初めて月面に降り立った歴史的なアポロ11号のエンジンだとベゾス氏は主張していた。しかし、エンジンがどのミッションに用いられたものかを特定するにはさらなる調査と復元作業が必要だ。

 サターンVロケットは、1968~1972年にケネディ宇宙センターから打ち上げられた10回のアポロ計画ミッションに使用され、いずれの場合も搭載していた5基のF-1エンジンは予定通り海中に落下している。シリアルナンバーが判明し、回収されたエンジンがどのミッションのものか特定されることが期待される。

◆インスピレーションの源

 どのアポロ計画ミッションのエンジンだったにせよ、ベゾス氏は今回の成果が人々にインスピレーションを与えることを願っている。「5歳のとき、アポロ11号の成功をテレビで見た。その体験は間違いなく私の科学、工学、探求への情熱に大きく寄与した。(中略)私の知る限り、NASAは5歳の子どもを何かに駆り立てることのできる数少ない存在だ。(中略)そして今回の試みを通じ、われわれもまた若い人たちを発明や探求に駆り立てられるかもしれない」。

 回収されたエンジンは今もNASAの所有物であり、ベゾス氏のチームによって復元されたのちNASAに返還され、おそらくはスミソニアン国立航空宇宙博物館で一般公開されることになる。

 同博物館にはアポロ計画にまつわる収蔵品が複数ある。アポロ11号の司令船コロンビアや、アポロ11号の宇宙飛行士マイケル・コリンズ(Michael Collins)、バズ・オルドリン(Buzz Aldrin)、ニール・アームストロング(Neil Armstrong)が着用した宇宙服などだ。

 ベゾス氏は、回収されたF-1エンジンの2基目を、自身の出身地ワシントン州シアトルにある航空博物館に収めてくれるようNASAに要請している。

 今回の「素晴らしい冒険」について、ベゾス氏は次のような感想を述べている。「船のデッキに引き揚げられた1つ1つのものが、当時、それまで絶対に不可能だと思われていたことの実現に力を合わせて取り組んでいた何千人というエンジニアたちのことを思い起こさせた」。

Image courtesy Bezos Expeditions

文=Lacey Gray

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