結婚を強要される少女たち

2013.03.15
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イエメンに暮らす、25歳の夫マジェド(Majed)と6歳の妻タハニ(Tahani)の結婚当時の写真。タハニは、「夫の姿を見るたびに隠れた。顔を会わせるのが嫌でたまらなかった」と話す。一般的な古典イスラム法解釈では、女性は9歳で一人前となり、結婚も可能とされる。イスラム法を厳格に守ろうとするサウジアラビアやイランなどではこれが法制化されているが、他の多くのイスラム教国では結婚最低年齢を15~18歳程度に定めている場合が多い。イエメンは例外的で、結婚最低年齢を定める法律がなく、9歳未満で嫁ぐ女児が数多い。

Photograph by Stephanie Sinclair, VII/National Geographic
 結婚を強要される女子児童や少女の数を想像できるだろうか。この悪しき慣習は驚くほど一般的に行われている。国連によると、発展途上国の少女9人に1人が15歳までに結婚させられる。何も対策を講じなければ、2020年までに年間およそ142万人にも及ぶという。 児童婚の慣習は貧困と文化的伝統が背景にあり、通常は家族によって取り決められる。身体的にも精神的にもその少女の人生を狂わせ、死に至らしめることすらある。

 ピューリッツァー賞を受賞した写真家のステファニー・シンクレア(Stephanie Sinclair)氏は、10年以上前から世界中の児童婚を取材している。2011年にナショナル ジオグラフィック本誌で特集した同氏の作品「幼き花嫁たち」はこの問題に光を当て、一般市民や世界の指導的立場にある人々に問題を訴えた。児童婚をテーマに先日開催された、国連婦人の地位委員会(CSW)のイベントを終えたシンクレア氏にインタビューした。

◆児童婚の最も気がかりな点は?

 多くの場合、少女たちは結婚を望んでいません。友人と遊び、教育を受け、青春を満喫するという普通の生活を送りたいと願っています。まず、このことを私たちは知らねばなりません。性的に成熟する前に行われる児童婚は、多くの少女から子どもらしさを奪い取ります。国際社会では容認できない行為です。貧困、疾病、産婦死亡率、乳児死亡率、女性に対する暴力などさまざまな社会問題の根底に児童婚があり、この不条理を解決できれば、自ずと他の問題の是正につながることでしょう。

◆2011年にナショナル ジオグラフィック本誌に掲載されてから何か変わりましたか?

 当時の児童婚に対する一般的な意識は今とは違っていました。しかし、掲載後まもなく、平和と人権のために協力するグローバル・リーダーの独立団体「エルダーズ」がこの問題に焦点を当て、「Girls Not Brides(少女を花嫁にしない)」という国際的パートナーシップを構築しました。アフリカ、南アジア、中東、ヨーロッパ、北アメリカの200以上の団体が、児童婚の根絶と少女が潜在能力を発揮できる未来づくりに取り組んでいます。

 また、私が所属している写真エージェンシー「セブン(VII)」は、児童婚の撲滅を目指す2年間のキャンペーンを国連人口基金(UNFPA)と共同で行い、第1回国際ガールズ・デーとなる2012年10月11日に、ニューヨーク市の国際連合本部で大規模な写真展を開催しました。その日に発表されたUNFPA報告書「若すぎる結婚」(Marrying Too Young)にも、私の写真が引用されています。今も仲間の映画製作者ジェシカ・ディモック(Jessica Dimmock)氏とともに、児童婚に関する新たな作品に取り組んでいるところです。

◆どのような施策が求められていますか?

 児童婚廃絶への取り組みには多方面からのアプローチが必要ですが、教育は保護の強力な手立てになります。できるだけ長期間、少女を学校に留めるのです。またコミュニティには、児童婚が少女の身体、未来の孫、社会全体に及ぼす深刻な影響を伝えることができます。また、意識を高めて未然に防ぐだけでは不十分です。教育と引き換えに家族へ経済的インセンティブを用意したり、少女に職業訓練を受けさせて家庭内での地位を向上させるなど、既に結婚している少女たちへの支援も忘れてはいけません。さらに、低年齢での妊娠、出産には適切な医療が必要で、長期的な解決策が不可欠です。

◆児童婚に対する今後の取り組みは?

 現在、タンザニアの児童婚が少女の健康に及ぼす影響をディモック氏と取材中で、国連の世界人口白書に発表する予定です。特にフィスチュラ(産科ろう孔)と呼ぶ深刻な病気に注目しています。性的暴行、女性器切除などでも起こる内臓間の異常な穴で、尿や便が性器から漏出してしまうのです。一般的に未成熟の性行為や出産には、子宮脱や子宮破裂などの危険を伴い、時には死に至ることもあります。

◆幼い花嫁の中で特に印象に残っているのは?

 どれも心痛む話ばかりですが、中でも当時8歳だった少女タハニ(Tahani)が心に残っています。タハニは6歳のときに25歳の男性と結婚しました(写真)。歯がまだ生えそろっていないぐらい外見は幼かったのですが、彼女を襲った現実が子どもらしさを奪ってしまいました。

◆あなたの活動が実を結んだ事例を教えてください。

 イエメンの当時10歳の少女、ノジュオド・アリ(Nujoud Ali)は、本人の勇気はもちろん、女性弁護士シャダ・ナセル(Shada Nasser)氏のサポートもあり、幸運にも結婚から数カ月で離婚できました。今は第2の人生を送っています。このように、離婚を望む少女が必要なサポートを受けられるようにしたいですね。

Photograph by Stephanie Sinclair, VII/National Geographic

文=Rena Silverman

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