コンクラーベの煙、色を変える方法とは

2013.03.14
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
3月13日、システィーナ礼拝堂の煙突から新教皇の決定を告げる白い煙が上がった。

Photograph by Gregorio Borgia, AP
 バチカンでは3月13日、システィーナ礼拝堂の煙突から新ローマ教皇の決定を告げる白煙が上がった。選出されたのはブエノスアイレス大司教のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿。アルゼンチン出身の76歳で、新教皇として自らフランシスコ1世を名乗る。 コンクラーベ(教皇選挙会)では、投票の結果が判明するたびにシスティーナ礼拝堂の煙突から煙を上げる。未決は黒、決まったときが白だ。この煙の色は一体どうやって変えているのだろうか。そのヒントを探るべく、『Chemistry of Pyrotechnics(花火製造の化学)』の共著者クリス・モセラ(Chris Mocella)氏に話を聞いた。

◆煙の色はどうやって調節するのでしょう?

 まずモセラ氏は、煙の発生原因となる現象について2種類あると説明する1つは燃焼。物質が不完全燃焼すると煙が発生する。もう1つは蒸発で、加熱された固体が液体を経て気体へ変化する。「暖炉で木やワラを燃やした際の煙は、燃焼生成物に由来する。つまり、木に含まれる炭素含有量の多い物質が不完全燃焼した結果だ」。二酸化炭素と同時に、灰色または黒色を帯びた“灰のような”化合物が放出される。では蒸発の場合はどうか。「急激な熱で固体物質が急速に融解、気化するが、燃焼には至らない。気化物質が空気中で再凝結、霧状になって煙に見える」。

◆どうすれば煙を白くできるのでしょうか?

「一部の燃焼生成物は、白色や明るい灰色をしている」。モセラ氏は具体例として、ある種の亜鉛化合物やリン元素を挙げる。燃焼すると水を引き寄せて細かい水滴を作り、濃い白煙に見えるという。「花火製造の世界ではごく一般的だ」。

◆バチカンの白煙を出す方法は推測できますか?

 モセラ氏によれば、蒸発法を用いている可能性もあるが、この技術は習得が難しいという。バチカンの枢機卿会では、より簡単な燃焼法を使っていると同氏は予測する。例えば金属亜鉛の粉末と硫黄元素の混合燃焼は、白煙を容易に作り出せる方法の1つだ。燃焼反応で硫化亜鉛の気体が生成され、白っぽい煙となって立ち上る。

◆黒い煙についても教えてください。

 黒い煙は、木などの有機物が不完全燃焼した場合により発生しやすいとモセラ氏は語る。「花火用の調合物を燃やすときに酸素量を制限すると、燃焼しきっていないススが大量に生成される。これが黒い煙の正体だ」。

◆バチカンでは黒い煙を出すのにわらを使っていたそうですね。

「ある種のわらは、燃える際に空気中の酸素が不足していると、黒い煙が出る。ただし、その場合でも、煙の量は少なく色も薄いはずだ。“真っ黒”にするには、濃密な煙を作り出さなければならない。そのため、爆発的な反応をする化学成分も一緒に燃やして、一気に多量の煙を発生させたのではないか」。

◆赤、青、緑など他の色の煙も可能でしょうか?

「現在では実にさまざまな色の煙を作れる」。一部の固形染料は、素早く液体になって気化した後、空気中で再凝結する。細かい水滴となって色の付いた煙を作り出すという。「花火用の材料を燃焼させて色素を蒸発させる場合は、準備に細心の注意が必要だ。染料は有機物を原料とする場合が多く、燃焼が激し過ぎるとすぐに黒っぽくなってしまう」。

◆色の付いた煙が自然に発生するケースはありますか?

「適正な条件と成分が必要なので、自然に発生するケースは極めてまれ。少なくとも地球上では、人の手を借りずに発生することはありえないと思う」。

 最後に種明かしとなるが、バチカンの広報は3月12日、白煙には塩素酸カリウムや松ヤニなど、黒煙には過塩素酸カリウムやアントラセンなどを使用していると初めて公表した。

Photograph by Gregorio Borgia, AP

文=Katia Andreassi

  • このエントリーをはてなブックマークに追加