イリノイ州、“ライオン肉禁止”の法案

2013.03.14
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アメリカ、アリゾナ州メサのレストラン「イル・ビナイオ(Il Vinaio)」が提供するライオン肉のパテ(2010年撮影)。

Photograph by Matt York, AP
 アメリカ、イリノイ州では最近、ライオン肉の取り扱いを一切禁止しようという動きが出ている。もっとも世間では、「そもそも食べる人がいるのか」という疑問の声も上がっている。 イリノイ州議会のルイス・アローヨ(Luis Arroyo)下院議員は先ごろ、「ライオンの食肉処理、および食肉処理を目的として、ライオンを所有、飼育、輸入、輸出、購入、または販売する行為は違法」とする法案を提出した。

 AP通信によるとアローヨ氏は、名指しはしていないが、アフリカライオンの販売業者がイリノイ州には少なくとも2社あるとしている。

 野生生物の違法取引に詳しい世界自然保護基金(WWF)のクロフォード・アラン(Crawford Allan)氏も、アメリカではレストラン向けの食肉用としてライオンが飼育されていると話す。ただしアラン氏は、「ライオン取引を不正とする法的根拠はアメリカにはない」と語る。

 イリノイ州ホーマーグレンで動物の加工処理会社を営むリチャード・チマー(Richard Czimer)氏は、まれに米国農務省認定のライオン肉を仕入れる場合があるという。議会に提出された法案についてチマー氏は、人々から食の選択権を奪うものだと考えている。

 チマー氏が特に指摘するのは、食肉処理される家畜は毎日何十万頭にも上るが、食用のライオンは非常に少ないという点だ。実際、2012年に同氏が購入できたのはわずか2頭だったという。

 一方、アメリカのネコ科動物保護団体「パンセラ(Panthera)」の代表を務めるルーク・ハンター(Luke Hunter)氏のように、「肉食哺乳類を口にすること自体、あまり勧められない」という意見もある。

 その理由の1つとして、個体数が世界的に減少していることが挙げられる。アフリカライオンは、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されており、西アフリカ諸国の一部では絶滅の危険性が非常に高くなっている。

 また野生の場合は、死体処理に危険を伴う可能性もあるとハンター氏は言う。というのも、肉食哺乳類は食物連鎖を通じて、結果的にさまざまな動物の組織を摂取するため、体内には寄生虫や病原体が蓄積されているからだ。2007年には、死後まもないクーガーを切断処理したアリゾナ州の生物学者が、原発性肺ペストを発症したという例も報告されている。

◆食用にされる絶滅危惧種

 ハンター氏によると、アフリカライオンの肉を食べる国は世界中でもまれで、生息地であるアフリカ大陸でも肉はまずいとされている。

 だが、絶滅危惧動物を食用とする国は世界各地に存在し、その種類は「相当な数に上る」とWWFのアラン氏は語る。

 例えば、その卵が「キャビア」として世界中で珍重されているチョウザメを始め、西アフリカや中央アフリカの大型類人猿、アジアの淡水カメ、中国のツキノワグマ、中南米やカリブ海諸国、西アフリカ、東南アジアのウミガメ、アジアの一部やアイスランドのクジラなどが該当する。

◆アジアで深刻化する野生生物の闇取引

 家畜以外の肉を食用とする国が圧倒的に多いのはアジアである。「この地域では、法的に捕獲が認められている野生生物が多い。タイやベトナムでは、トラなど野生動物の肉料理を出すレストランも珍しくない」とハンター氏は話す。

 アジアの一部の国には、表向きはトラを目玉とした観光施設を運営しながら、その裏で捕獲したトラのさまざまな部位を密かに商う業者がいくつもある。もちろん、野生トラの密猟者にとっては格好の取引相手となっている。

 ハンター氏の試算によると、取引目的で捕獲され飼育されているトラは4000~5000頭に上るという。

 またアラン氏の指摘によれば、中国にはトラの骨の代用品としてライオンの骨がアフリカから輸入されているという。

 今回イリノイ州議会で提出された法案も、些細なライオン肉取引を禁止するのではなく、動物保護を実際に促進するような内容であれば、より意義を深めたに違いないとハンター氏は話す。

「ライオン肉のハンバーガーを買うお金があったら、野生のライオンやトラを保護する活動にぜひ寄付して欲しい」。

Photograph by Matt York, AP

文=Christine Dell'Amore

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