ライオンはなぜ人を襲うのか?

2013.03.11
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アメリカ、カリフォルニア州の動物保護施設「プロジェクト・サバイバル・キャット・ヘイブン(Project Survival Cat Haven)」で、インターンの飼育係がオスのライオンに襲われて死亡した。写真は3月6日当日、閉鎖された同施設の正面玄関で撮影。

Photograph by Mark Crosse, McClatchy Tribune/Zuma Press
 アメリカ、カリフォルニア州ダンラップにある動物保護施設「プロジェクト・サバイバル・キャット・ヘイブン(Project Survival Cat Haven)」で6日、アフリカ生まれのライオンが女性インターンの命を奪った。「CNN」によれば、死亡したのはシアトル在住のダイアナ・ハンソン(Dianna Hanson)さん(24歳)。檻を掃除中、小さな囲いから出てきた体重160キロのライオン、「クスクス(Cous Cous)」に襲われた。ハンソンさんは首を骨折して即死。その後も危害を加えるクスクスを、現場に駆けつけたフレズノ郡の保安官代理が射殺したが、既に手遅れだったという。

 ネコ科の大型動物の専門家2人に、今回の悲劇について語ってもらった。ミネソタ大学の生態学者で、2012年にナショナル ジオグラフィックのウェイト助成金を授与されたクレイグ・パッカー(Craig Packer)氏、ナショナル ジオグラフィック協会ビッグキャッツ・イニシアティブ(Big Cats Initiative)の助成プログラムの責任者ルーク・ダラー氏だ。

◆ニュースを聞いてどう思いましたか?

クレイグ・パッカー氏: 檻の中を掃除するために一時的に閉じこめていた囲いをライオンが破り、若い女性に襲い掛かったようです。設備が整った動物園なら頑丈な囲いを用意して、従業員の身の安全に細心の注意を払っています。

ルーク・ダラー氏: 射殺した行為を非難するのはやめてほしい。できるだけ早く被害者に治療を施すため、すぐ行動を起こしたのですから。まずは危険を取り除くべきです。

 ライオンは大型で強い捕食動物です。飼育係を「襲って食べる」つもりだったのか、または単に「遊び方が乱暴すぎた」だけだったのかは今のところはっきりしません。ただ、こうした動物の扱いには十分な敬意とともに、絶えず警戒が必要なのです。

◆このような事故の危険を減らす方法はありますか?

パッカー氏: ライオンは、世間・マスコミなどの関心を引く代表的な野生動物です。フロリダ州にある「ライオン・カントリー・サファリ(Lion Country Safari)」などのサファリパークから、映画『ライオン・キング』や『野生のエルザ』、『ナルニア国物語』や『オズの魔法使い』などの文学にもよく登場します。ふわふわした大型哺乳動物というイメージが先行して、かわいい子どもや家族愛もよく取り上げられています。

 動物園のライオンは、いつもリラックスしているように見えて、抱きしめたくなるほど愛らしいと感じる。一方、忘れがちなのは、反射的によみがえるサメのような本能です。10年前、ラスベガスのステージでマジシャンのコンビ、ジークフリート&ロイ(Siegfried and Roy)のロイが、長年の相棒だったトラに襲われました。秘められた本能を忘れたときに、このような事故が起きるのです。

◆ライオンのような野生動物を飼いならすことは可能ですか?

ダラー氏: ネコ科の大型動物をペットのように扱うのは賢明ではありません。こうした生き物を愛し、尊重するのは本当に素晴らしいことですが、心を交わし、友情を育むことができると考えるのは愚かです。ネコ科の大型動物だけでなくクマや毒ヘビでも、過去に何度も思い知らされているはずです。

 われわれは人を殺す力があるからこそ(ライオンなどの危険な動物に)魅せられます。ところが、どういうわけか、いまだに越えてはいけない一線を越えてしまうことがあります。擬人化は危険な行為です。ライオンは野生動物であり、『ライオン・キング』のシンバではないのです。

Photograph by Mark Crosse, McClatchy Tribune/Zuma Press

文=Christine Dell'Amore

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