ミツバチはカフェインで記憶力アップ

2013.03.11
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コーヒーノキの花を訪れるミツバチ。この花の蜜にはミツバチの記憶力を向上させる少量のカフェインが含まれている。

Photograph courtesy Geraldine Wright, AAAS/Science
 1杯のコーヒーは人々を朝シャキっとさせるだけではない。ミツバチもこの“気付け薬”を必要としている可能性がある。コーヒーノキを含む一部の植物は、カフェインを使ってミツバチの記憶力に影響を及ぼしていることが研究によって明らかになった。それらの植物の花蜜に含まれる少量のカフェインは、花粉媒介昆虫(ポリネーター)にとって大きな見返りになっているという。 苦味のあるカフェインは、主に植物がナメクジなどの草食動物から身を守るための毒として生成する物質だ。多量のカフェインは有毒であり、花粉媒介昆虫を遠ざけるおそれがある。

 だがこれに対し、少量のカフェインには、ミツバチを引きつけ、その長期記憶を向上させる二次的利益があると、研究を率いたイギリス、ニューカッスル大学の神経科学者ジェラルディン・ライト(Geraldine Wright)氏は言う。

「カフェインは、草食動物を遠ざけ、毒として作用することを主な生態学的役割とする化合物だが、実際には生態学的な“ドラッグ”として作用していることを突きとめた。植物は花粉媒介昆虫にひそかにドラッグを与えている。それはミツバチの側にとっても利益だが、植物の目的はそれよりも彼らに忠実に仕事をしてもらうことにある!」とライト氏は述べている。

 ライト氏の研究チームは、カフェインがミツバチの学習・記憶能力にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、ミカン属とコーヒーノキ属の植物のカフェイン含有量を測定した。どちらの植物もミツバチを引きつけるために精巧な花をつけ、強い香りを放つ。ミツバチに花粉を媒介してもらうことで、より多くの果実と種をつけることができる。

 カフェインのドラッグとしての“薬理作用”を測定するため、研究チームは古典的条件づけの手法を用いてミツバチの個体に訓練を施した。カフェインを含むエサと含まないエサを報酬に使い、花の香りに反応して吻(ふん、口先の部分)を突き出すようにする訓練だ。

 実験の結果、ミツバチはカフェイン、すなわち気付け薬の効果が得られる報酬に関連した花の香りを記憶することがわかった。

 最も顕著な効果がみられたのは長期記憶の実験だ。カフェインを含むエサを報酬に与えられた場合、ミツバチが24時間後に花の香りを記憶しており、カフェインの報酬を求めて舌を突きだした確率は、カフェインを含まないエサを与えられた場合の3倍にのぼり、72時間後でも2倍を記録した。

 ライト氏によると、カフェインはミツバチの脳内で学習・記憶課題に対するニューロン(神経細胞)の反応を変化させるという。感覚入力に対する細胞の応答が強まり、その変化がさらに記憶形成の主要メカニズムである長期増強を引き起こす。

 カフェインが人間の学習と記憶に及ぼす影響はそこまで明らかになっていない。「しかし、われわれが繰り返しカフェインを摂取するのは、それを飲むことで得られる感覚を求めてのことだというのは確かだと思う」とライト氏は述べている。

 今回の研究は3月8日付で「Science」誌オンライン版に発表された。

Photograph courtesy Geraldine Wright, AAAS/Science

文=Christy Ullrich

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