ネアンデルタール人の復活!?

2013.03.08
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DNA情報を元に復元されたネアンデルタール人の女性「ウィルマ」。

Photograph by Joe McNally, National Geographic
 2009年、ネアンデルタール人のドラフトゲノム解析が終了した。現在は、数十億の塩基配列がコンピューターのデーターベースに保存されているにすぎない。それでも、想像をかき立てるには十分だ。研究者たちはこの遺伝子の青写真から、生身の新しいネアンデルタール人を生み出すことができるのだろうか? 複数の専門家によれば、そう遠くない未来、遺伝子工学の進歩によってこのような離れ業が可能になるかもしれないという。ただし、そのような復活劇には、実際に起きるべきかどうかも含めて、さまざまな問題が浮上するだろう。

 1996年に世界初の哺乳類のクローン羊「ドリー」が誕生して以降、クローン技術は著しく拡大、進歩している。2003年には、スペインの研究チームが絶滅種の復活に初めて成功。山に暮らしていた野生のヤギの亜種、ブカルド(ピレネーアイベックス)のクローンがつくられ、わずか数分ながら現代によみがえった。

 これらの例はすべて、核移植と呼ばれる手法を用いている。クローン対象の動物の細胞(冷凍でも可)からDNAが含まれる核を取り出し、同じ種または近縁種の未受精卵に移植する。できた雑種の卵細胞を代理母の子宮に移植、妊娠させる。最後に、代理母がクローンを出産する。

 しかし、ネアンデルタール人の無傷の細胞など存在しない。どうすればクローンを作成できるのだろう?

 ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ(George Church)氏は2012年に出版した『Regenesis』(復活)の中で、既にゲノムが解析されている絶滅種のクローンを作成する別の方法を提案。近縁種の健康な細胞を使用するという。例えば、ネアンデルタール人の場合、現代人の幹細胞を使用すればいい。遺伝子工学の新技術をいくつか用いれば、現代人の幹細胞のDNAをネアンデルタール人のコードに書き変えることができる。

 まだ技術の精度が低く、費用も安くないため、実際のゲノム再現までには至っていない。しかし、チャーチ氏は希望を見いだしている。「遺伝子操作された細胞から生物をつくり出す技術は、マウスなどで十分に実証されている。ほかの哺乳類に応用できないという明白な理由はない」。

◆倫理的な問題

 もし現代人の細胞のネアンデルタール人化に成功したら、次は人間かチンパンジーの代理母の子宮に移植し、胎児に成長させる。ただし、この段階でも大きな困難が予想される。イェール大学の遺伝学者ジェームズ・ヌーナン(James Noonan)氏は、「過去のクローン作成の実績から、失敗の確率が非常に高い」と話す。

 ヤギのブカルドの事例では、核移植した卵細胞を439個用意したにも関わらず、胚に成長したのはわずか57個だった。さらに、妊娠期間が終わるころには5個まで減り、結局、1頭しか生まれなかった。このような数字は、おそらく代理母の心身に大きな負担を与えるだろう。

 たとえクローンが生き延びたとしても、ネアンデルタール人の生育には数々の倫理的なジレンマを乗り越えなければならない。いくつか現代人に似ている点はある。彼らは道具を使ったり、芸術的な創作活動も行っていた。言語や抽象的思考の能力を備えていた可能性も高い。

 ただし、現代人とは似ても似つかない点もある。農業革命以前に絶滅したため、穀物や乳製品を大量に摂取する現代の食事はうまく消化できないだろう。大きな頭と強い筋肉を持つずんぐりした外見は、われわれの中で目立つこと間違いなしだ。

 どのようなクローンでも、倫理的な問題は避けるわけにはいかないとチャーチ氏は考えている。「いかなる種でも可能な限り、身体的、社会的に健全な暮らしを送ってほしい」。

◆クローン作成の意味は?

 そもそもネアンデルタール人のクローンに、科学的な正当理由があるのか疑問視する科学者もいる。

 絶滅した古代人を丸ごと復活させるより、いくつかの細胞の作成に集中した方が役に立ち、倫理的にも受け入れやすいという意見がある。

 ネアンデルタール人と現代人の生物学的な差異が明らかになり、人類学者は2つの種が分岐した進化の歴史をよりよく理解できるかもしれない。細胞の比較により、現代病に関する新たな洞察が得られる可能性もある。

Photograph by Joe McNally, National Geographic

文=Virginia Hughes

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