陥没穴、発生のしくみと原因

2013.03.06
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アメリカ、フロリダ州タンパ郊外のセフナーで、就寝中の男性が陥没穴に飲み込まれた現場を大勢の人々が見守る(3月1日撮影)。

Photograph by Edward Linsmier, Getty Images
 アメリカのフロリダ州で2月28日、就寝中の男性が突然、住宅の直下に出現した巨大な陥没穴に寝室ごと飲み込まれるという、悪夢のような事故が起きた。同州中部タンパ近郊のセフナーの民家の床下に、突如として幅6メートルほどの穴が開き、寝室で寝ていたジェフ・ブッシュ(Jeff Bush)さん(37歳)が転落。弟のジェレミー(Jeremy)さんが救助を試みたが、発見することはできなかった。ジェレミーさんをはじめ家族5人は全員無傷で避難したという。ジェフさんは依然として行方不明だが、生存の可能性は低いとして捜索は打ち切られた。家屋は既に解体作業が始まっている。 隣人の痛ましい事故を目にして住民には動揺が広がる一方、陥没穴に関するさまざまな疑問が浮上している。陥没穴が発生するしくみと原因について、アメリカ地質調査所(USGS)のランドール・オーンドーフ(Randall Orndorff)氏に話を聞いた。

◆陥没穴とはどのようなものですか?

 基本的には、地下の空洞が原因でできたくぼみに、周囲のさまざまなものが流れ込むことによって形成される、崩壊性の地形、またはお椀型の地形を指します。

◆どのくらいの種類がありますか?

 大きく分けて2種類あります。1つは“沈下型(cover-subsidence sinkhole)”と呼ぶ現象で、砂を多く含む上層部の土壌がその下にある岩盤内の空洞に向かって移行し、地面がゆっくりと沈み込みます。突発的に形成されるわけではなく、数年~数十万年という長い期間がかかります。

 もう1つは“崩壊型(cover-collapse sinkhole)”で、今回フロリダで起きた事故はこのタイプです。地下の空洞内に上層部の土壌が流れ込むのは地盤沈下の場合と同様ですが、この崩壊型では、粘土を多く含んだ土壌内の空洞が上方へと広がります。ただし、地表からその空洞が見えることはなく、あるとき上部を覆っていた不安定な地盤が突如として崩落するのです。

◆人為的な活動が原因になるケースはありますか?

 もちろんです。カルスト地形(石灰岩など水に溶けやすい岩石の侵食によって形成された凹凸に富む地形)では時々見られますが、鉱物採掘などに利用する水を求めて井戸を掘削し、地中からくみ上げると、地下水面は下がります。すると、その上の土壌も必然的に下へ移動することになります。

 また、駐車場の設置工事や建物の建設工事が始まり、環境内の水の循環過程が変化する場合などにも生じることがあります。

◆陥没穴ができる場合、どのような前兆が見られますか? また、未然に防ぐ手立てはありますか?

 前兆現象はいつも表れるわけではありませんが、皆無ではありません。まず、家屋や建物の基礎部分に、新しい亀裂がないかどうかよく観察してください。また、突然ドア枠がゆがみ、ドアの閉まりが悪くなったという場合も注意が必要です。

 家屋や建物の外まわりでは、地面に亀裂や小さなくぼみが見つかる場合があります。もしそれらがわずかな範囲に集中していたら、崩落が始まっている可能性も否定できません。また樹木が突然傾き始めた場合は、原因が根の喪失にあるのか、周囲の地盤沈下にあるのかを見極める必要があります。もっとも、その樹木に近寄ることは避けるべきです。

 次に、未然に防ぐ手立てについてですが、もし構造物の地下に空洞が確認できる場合には、土壌をすべて掘り返して岩盤を露出させます。そこへコンクリートを注入し、大きめの石や細かい砂利を敷けば、陥没穴の出現を食い止めることができるかもしれません。この方法は、これまでの実績に照らしてある程度有効だとされています。ただ、今回のフロリダのケースように建物の床下に空洞が潜んでいる場合、確認は非常に困難だと思います。

◆過去に出現した陥没穴の中で、規模や被害が特に大きかったものは?

 崩壊型の場合は発生現場が局地的なので、死者が出たとしてもその数は限定的です。私が知る範囲では、犠牲者を出した陥没穴の多くは幹線道路上で発生しています。走行中の自動車もろとも穴に転落した人や、穴が開いたまさにその場所に立っていて命を落とした人も少なくありません。

 2010年にグアテマラの首都に出現した陥没穴は信じられないほど巨大で、まるで底なしの穴のようでした。地質学者にとっては、さぞや壮観だったことでしょう。このケースはカルスト地形とは関係ありません。破損した下水管や排水管によって、地中に空洞が形成されたことが原因だったようです。

◆出現頻度は近年増加していますか?

 十分なデータがないので、正直なところわかりません。ただ、地球上の人口が増加するにつれて、陥没穴の生じやすい土地開発はますます活発になるでしょう。陥没穴の出現とそれに伴う被害のニュースを耳にする機会は、今後増えるのではないでしょうか。

Photograph by Edward Linsmier, Getty Images

文=Jeremy Berlin

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