ベトナムのカフェで、サイの角を細かくすりおろす女性。

Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic
 国際自然保護連合(IUCN)が発表した報告によるとアフリカでは、角めあてのサイの殺害頭数が危機的な水準に近づいているという。 2013年だけでも、11分に1頭もの割合で殺されている計算になる。だが、ナショナル ジオグラフィック誌2012年3月号でサイの角をめぐる密猟と闇取引の記事を執筆したピーター・グウィン氏は、驚くには当たらないと話す。「角をアジアの闇市場に流せば大きな利益が得られる。その味を知る犯罪組織が存在する限り、密猟は続くだろう」。

 ベトナムや中国では、角をさまざまな病気に効く万能薬として服用する習慣があり、闇取引が非常に盛んだ。近年の密猟増加に拍車をかける要因となっており、IUCNによると2011年以降に殺されたサイは少なくとも1700頭に上り、全個体数の7%に相当する。その3分の2以上は、全世界の73%の野生種が住む南アフリカで確認された。アフリカ全体では、クロサイ5055頭、シロサイ2万405頭が生息。IUCNはクロサイを絶滅危惧IA類(絶滅寸前)に指定している。

 グウィン氏は、末端の密猟者に対応するだけでは成功しないと語る。密猟組織はヘリコプターや麻酔銃、高性能武器を所持しており、資金も豊富だ。南アフリカ政府は取り締まりに乗り出しているが、効果はあがっていない。

「南アフリカ政府は密猟に対する姿勢を年々厳しくしているが、殺されるサイの数は猛烈な勢いで増え続けている。需要側に対する実効性のある対策が求められており、アジアでの闇取引を徹底的に取り締まるのは方法の1つだと思う。また、議論の余地はあるが、サイの角を持続可能な範囲で採取し、その取引を法律で管理しながら膨大な需要に対処する手法もありうる。ただし、どちらの対策も一筋縄ではいかないだろう」。

 サイの角は死んで角質化した表皮細胞であり、切り落としても2年ほどで再生する。

◆高まる期待と立ち塞がる障害

 南アフリカとベトナムは2012年12月、サイの密猟およびその他の自然保護問題の取扱いに関する覚書に調印、いくつかの具体的な対策が現実味を帯びてきた。情報共有や連携強化など、不法行為を阻止する取り組みの実現が期待されるが、グウィン氏は文化的な背景が最大の障害になると指摘する。「ベトナムや中国では、サイの角に薬効があると信じて疑わない人が大勢いる」。

◆国際会議での議論

 3月3日からタイのバンコクで開催されるワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の第16回締約国会議では、サイの密猟および角の取引が主要議題になる。グウィン氏は、サイを生かしたまま持続可能な範囲で角を採取する問題についても、当然議論になると考えている。

「南アフリカの政治家や法執行機関の間では、この案への賛同が増えている」とグウィン氏は述べる。国際社会も「サイを絶滅から守るためには、大量殺りくの阻止が必要」という認識は共通だ。しかし、持続可能な方法で採取されたとしても、取引の合法化は自然保護の観点から認めないとする意見もあるという。

Photograph by Brent Stirton, Getty Images/National Geographic

文=Tom O'Neill