敵を威嚇するサメのライト・セーバー

2013.01.27
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ベルベットベリー・ランタンシャーク(下)は、背びれの2つのトゲを発光させて(上、円内)、捕食者を威嚇している。

Images courtesy Jerome Mallefet
 最新の研究によると、深海に生息する小さなサメは、背びれのトゲを“ライト・セーバー”のように発光させて、捕食魚に丸呑みされないよう威嚇しているという。 矛盾しているように思われるかもしれないが、このサメは自らを隠す目的と目立たせる目的で発光しているとみられる。後者の目的については、発光機能を持つサメでは初の種となる。

「3年前に、カラスザメの1種ベルベットベリー・ランタンシャーク(英名:velvet belly lantern shark、学名:Etmopterus spinax)が、カウンターイルミネーションを利用して身を守っていることがわかった」と、研究論文の主著者でベルギーのルーバン・カトリック大学の生物学者ジュリアン・クレ(Julien Claes)氏はメールで述べている。

 カウンターイルミネーションとは腹面の発光を海面からの光と同調させ、自分の影を消して下方からの敵を惑わす防御方法だ。このカラスザメをはじめ多くの深海動物が利用している。

 研究者たちは、ノルウェーのフィヨルドで体長60センチのランタンシャークを捕獲後、薄暗い水槽に投入。すると腹面だけでなく、背面の一部も発光することがわかった。 ランタンシャークの2つの背びれの先端には危険なトゲが備わっており、その両側に発光器という2列の発光細胞がある。

 論文の共著者で、同じくルーバン・カトリック大学のジェローム・マレフェ(Jerome Mallefet)氏は、サメが上下の発光器をどのように使い分けているのか、また、背びれのトゲの役割を確認した経緯について説明した。

「時おり、体を反転させて、トゲで敵を攻撃しようとする」とマレフェ氏は語る。「武器を発光させ、暗い深海で誇示していると考えた」。

 この仮説を検証するため、研究者たちはトゲの構造を分析。すると、他のサメと違って半透明であることが判明した。この性質のため、トゲは発光器からの光を約10%通すことができる。

◆捕食者のみに見える光

 研究者たちは各種深海生物をベースにして、ゼニガタアザラシ(学名:Phoca vitulina)やネズミイルカ(学名:Phocoena phocoena)、トラザメの1種であるブラックマウス・キャットシャーク(英名:blackmouth catshark、学名:Galeus melastomus)といった捕食者の視力を推定。数メートル離れていてもランタンシャークの光るトゲが見えると判断した。

「トゲの生物発光には、威嚇信号として適切な役割を果たすためのあらゆる特性が備わっている」とマレフェ氏は話す。「私はここにいますよ。トゲがあるので近寄らないように、と言っているようなもの。何とも画期的な挨拶の仕方だ」。

 その反面、大好物であるエソの仲間、キュウリエソ(学名:Maurolicus muelleri)を捕まえるうえでは妨げにならないという。こうした魚は、ランタンシャークの捕食者よりも視力が低く、極めて近距離でないと背部の発光を感知できないとみられている。

 現時点では、背面の発光・制御メカニズムは謎のままだ。腹面の光を制御する場合と同じホルモンに反応を示すとマレフェ氏は考えているが、他の要因も関与している可能性がある。

◆光輝く“冒険者”

 威嚇信号として発光する種は他にも存在する。海生巻貝の1種(学名:Hinea brasiliana)やグローワーム(学名:Lampyris noctiluca)、ヤスデの1種(学名:Motyxia類)がその例だ。

 海洋調査保護協会の海洋生物学者イーディス・ウィダー(Edith Widder)氏は、深海生物の発光能力はさまざまな用途があると指摘、「発光する生物は数多く存在するが、その使い道の幅広さは想像以上だ」と述べる。

 マレフェ氏も同意し、冗談交じりでこのサメを“光輝くヒーロー”と呼んでいる。「せっかくこんな機能が与えられたのだから、機会があれば躊躇無く使おうとするだろう」。 一方で、ウィダー氏は威嚇信号説を軽視しているわけではないが、「仲間を引きつけるため」という可能性も指摘している。

 研究リーダーのジュリアン・クレ氏は、「博士論文に取りかかっている時に気がついたんだが、ランタンシャークはなんと生殖器官も発光させている」とメールで述べている。「暗い中でも相手の性別が簡単にわかるなんてうらやましい」と同氏は舌を巻いている。

 今回の研究結果は、「Scientific Reports」誌オンライン版に2月21日付けで発表されている。

Images courtesy Jerome Mallefet

文=Helen Scales

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