世界最高齢の野生アホウドリ「ウィズダム」(左)。パートナーを押し動かして、自分で卵を温めようとしている(2012年11月撮影)。

Photograph courtesy Pete Leary, USFWS
 確認されている限りでは世界最高齢の野鳥、アホウドリの「ウィズダム(知恵)」が、新たな偉業をなしとげた。また子どもを産んだのだ。 ウィズダムはアメリカのミッドウェー環礁国立自然保護区に住むコアホウドリで、年齢62歳を上回る超ベテランだ。アメリカ地質調査所(USGS)の北アメリカ鳥類標識調査プログラム(North American Bird Banding Program)によると、今年で6年連続、通算ではおそらく35回目の産卵になるという。

 ウィズダムの長寿が判明したのは、USGSの野生生物学者チャンドラー・ロビンス(Chandler Robbins)氏が、足環を用いた長期的な鳥類標識調査プロジェクトを立ち上げたおかげだ。

 現在94歳のロビンス氏は、1956年に最初の足環をウィズダムに付けた人物だ。「当時は、調査対象の野鳥の1羽にすぎなかった」とロビンス氏は話す。同氏はその後10年間で、コアホウドリやクロアシアホウドリなど、膨大な数のアホウドリに足環を付けて回った。当時、アメリカ海軍の航空機と大型の海鳥の衝突事故が頻繁に発生しており、海鳥の生態を調査する大プロジェクトが進められていた。

 現在はパパハナウモクアケア海洋ナショナル・モニュメントの一部となっているミッドウェー環礁をロビンス氏が再び訪れたのは2002年。「できる限り多くの野鳥を再び捕獲した。可能性はわずかでも、“昔なじみ”がまだいるのではないかと期待していた」。

 そして、実際にウィズダムと再会する。ただし実際は、メリーランド州ローレルにあるパタクセント野生生物研究所(Patuxent Wildlife Research Center)に戻り、足環の番号をデータベースと照らし合わせるまでは気が付かなかったという。

◆本当は知恵のあるアホウドリ

 コアホウドリ(学名:Phoebastria immutabilis)は1年のほとんどを海で過ごし、冬の間だけミッドウェー環礁で巣ごもりをする。5歳ごろから産卵を始めるので、ウィズダムは1956年の段階で少なくとも5歳だったことになる。

「巣ごもり中のアホウドリは巣を守るためじっとしている。ほかの鳥と違って、網や罠は必要ない。簡単に足環を付けることができるんだ」とロビンス氏は話す。

「ただし、侮ってはいけない。長く鋭いクチバシとかぎ爪を持っているので、扱い方を間違えると攻撃を食らうことになる」。なお、ロビンス氏が足環を付けたアホウドリは10万羽を超えるという。

 ウィズダムをはじめ、アホウドリを愛するロビンス氏は、海鳥たちが直面する新たな脅威について懸念を示す。

 航空機はもう問題ではなくなった。アホウドリが巣作りを行う砂丘を、滑走路からはるか遠くに移したためだ。しかし今や太平洋の海面はプラスチック片だらけ。海鳥が飲み込む危険性が高まっている。また、漁業用の延縄(はえなわ)に絡まったり、ミッドウェー環礁の建物に依然として使用されている有毒な含鉛塗料によってダメージを受けるケースは後を絶たない。

「ウィズダムは、数々の危険を回避してこれだけの年数を生き延びた。さらにまだ子育てを行っている。異例中の異例と言えるね」とロビンス氏は話す。

「彼らは老練でとんでもない知恵者なんだ」。

◆まさに驚異

 アホウドリは海でエサを捕らえ、子育て中にはミッドウェー環礁まで持ち帰る。USGSによると、1956年以降のウィズダムの移動距離は300万~450万キロに達すると推定されるという。地球と月を4~6回往復できる距離だ。

 北アメリカ鳥類標識調査プログラムの代表を務めるブルース・ピータージョン(Bruce Peterjohn)氏は、「大型の鳥は寿命も長くなる傾向があるが、それにしても、ウィズダムはまさに驚異的だ」と話す。

◆鳥瞰

 今後の調査課題についてロビンス氏は、「無線送信機を取り付けてアホウドリの全生涯を追跡した人はまだいない。」と話す。

「非常に魅力的なプロジェクトだが、私はもう94歳だ。後輩たちの取り組みを天から眺めることにするよ」。

Photograph courtesy Pete Leary, USFWS

文=Christine Dell'Amore