アメリカ大統領と生物標本(4)

2013.01.21
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【ジェファーソンとナマケモノ】古代の地上性ナマケモノ(学名:Megalonyx jeffersonii)の手の骨。アメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある自然科学アカデミーの脊椎動物学者テッド・デシュラー(Ted Daeschler)氏によれば、この骨は18世紀にフランスの博物学者ビュフォンが『博物誌』で提唱した“新世界退化説”に反証する役割を果たしたという。

Photograph courtesy Academy of Natural Sciences of Drexel University
【ジェファーソンとナマケモノ】

 アメリカ大統領の自然界への関心は、祖国への抑えがたいプライドに端を発することもある。 写真は古代の地上性ナマケモノ(学名:Megalonyx jeffersonii)の手の骨。アメリカ、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある自然科学アカデミーの脊椎動物学者テッド・デシュラー(Ted Daeschler)氏によれば、この骨は18世紀にフランスの博物学者ビュフォンが『博物誌』で提唱した“新世界退化説”に反証する役割を果たしたという。

 ビュフォンは当時、アメリカのほとんどの動物(ヒトを含む)は脆弱で、小さいと主張し、ヨーロッパなど旧世界が優位に立つと論じた。新世界では何も丈夫に育たず、大気もひどい状態で、土壌は痩せ地だという。

 博学で生物学にも造詣が深かったトーマス・ジェファーソンは、バージニア州知事、フランス公使、副大統領を歴任しつつ、ビュフォンの偏見に満ちた主張に反論するための証拠集めに数年を費やした。

 特に、ヘラジカの骨や枝角といった大型動物の標本をヨーロッパに送り、祖国の生命力を示そうと試みる。そして、地上性ナマケモノの巨大な手の骨は、この取り組みにぴったりの標本だった。

 この化石は現在のウェストバージニア州の洞窟で発見され、1796年、ジョン・スチュアート大佐からジェファーソンに贈られた。ジェファーソンはその大きさから、ライオンやパンサーといった大型肉食動物のかぎ爪ではないかと考えた。

 数カ月後、南アメリカで発見されたよく似た標本のスケッチと比較し、ナマケモノの化石と気付く。

 1797年、アメリカ哲学協会(American Philosophical Society)に向けて発表を行う際、この動物をメガロニクス(Megalonyx)と呼んだ。“巨大なかぎ爪”という意味だ。そして1799年、科学論文を発表する。

 1822年、初めてこの動物を詳述した偉大な人物に敬意を表し、メガロニクス・ジェフェルソニ(Megalonyx jeffersonii)と正式に命名された。

Photograph courtesy Academy of Natural Sciences of Drexel University

文=Jane J. Lee

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